PART13
〜ボートクルーズ〜 セルチューク三日目。この日は前々から決めて
いたように、ボートクルージングに行く。9時前
後にクシャダスの海から一日かけて近隣の海や島
などをまわるのだ。ユーゾーさんにチケットをと
ってもらった、次の目的地へのバスの時刻は23:30。
たっぷり時間がある。
朝の遅い3人を尻目にさっさと用意をすませたMは、
ホテルの前庭で3人を待つ。そこで竹田君と一緒に朝食を
取った。竹田君もボドルムでクルージングにいったそうで、
綺麗な島をまわったり海に潜ってウニを取ってその場で食
べたり、といった話を聞く。Mの心ははや、エーゲ海に
向っていた。竹田君と写真を撮り、その後三人が出てくる
のを待ってクシャダスへむかう。
クシャダスまではドルムシュ(乗合バス)で。ボート
セーリングにはどこで降りてよいか分からず、しかも英
語が通じないので少しヒヤヒヤしたが、何とか海の辺り
で降りる。海岸沿いのメインストリートを歩いて行くと、
トラベルエージェンシーがたくさんある。ところがどの
看板を見てもクルージングの出発時刻は10分前の9:00で
ある。ためしにエージェンシーのオフィスに入って聞い
てみても9:00以外の便はない、という。やはり少し遅か
ったようだ。明日の予約をしていかないか、としつこく
勧誘する店員を振り切って猛暑の通りを当てどもなく歩
いていく。
ふと気付くとヨットハーバーのような場所に立っていた。
そこにいくつかの小さな舟が止まっていて、その前に小さな
看板が立っている。「ヨットクルージング 2時間$50」 かな
り割高である。ぼそぼそと相談していたらどこからともなく
おっちゃんが現れた。
「貸しきりで2時間。楽しいよん」
「まあ、せっかく来たんだし乗っていくか。」
という程度の気持ちで受けた。ところが最初に乗った舟は
エンジントラブルで動かず、別の舟に乗り換えた。おいおい、
大丈夫か?
舟のクルーは3人。皆若く、最初はお互い遠慮していたが
そこは陽気なトルコ人、すぐに仲よくなった。ただ、なかな
か名前を覚えてもらえなかった。舟は岸から数百メートル位
のところを縫うように通って景観を楽しみ、その後、海水浴
場の2,300メートルくらい沖で止まり、いかだを降ろした。
どうやらここで泳ぐらしい。確かにものすごく綺麗なのだが
当然足は着かないし波も結構激しい。桃とハムはすぐにざぶん
と入っていって海岸の方へ泳いでいったが、Mは少し尻込み
していた。
するとクルーの人が救命胴着を貸してくれそれを着けて入る。
その辺をちゃぷちゃぷうかんでいた後、海岸へ泳いでいった。
救命胴着はそんなに空気が入っていず、浮き輪のようには行か
ないのだが大分楽になった。海岸で少し遊んだ後、帰りは浮き
輪をハム男に預けて自力で泳いでいくことにした。ところが半
分くらい来てから自分はあまり泳ぎが得意でないことを思いだ
す。救命胴着がないと体がやたら重い。やばい。死ぬ。手が疲
れてだるくなり、平泳ぎなんだか犬かきなんだか分からなくな
る。名付けて犬泳ぎ、なんて言葉が頭をよぎってますます溺れ
そうになる。泳いでも泳いでも舟はいっこうに近付かない。
とにかく舟のそばまで行って溺れよう。ここで沈んでも誰も
気付かないかも....
舟に上がった時はもう瀕死の状態であった。帰りはやたら
揺れて、船酔いで気分が悪くなる。しかしそれを知ってか知
らずか陽気なトルコ人、ラジカセから派手な音楽を鳴らして
無理矢理躍らせる。しんどいながらも作り笑いをうかべて躍
る姿はまさに山海塾。港に近付くにつれ、人が注目して恥ず
かしいのにより一層激しく躍らされたのだった。今、日記を
読み返していると、この日の感想に「とても楽しい」とある。
舟から降りた後、遠くにみえる城まで行ってみることにする。
何の城だかよく分からないが、とにかく城である。歩いていると
少年がいきなりMの着ているコリンチャンスのゲームシャツを
くれ、と言ってきた。別に少年とは知り合いでも何でもない。た
だくれ、というのだ。よく分からない国民だ。
後で観光ガイドを見てみると、ここは城ではなくギュヴェルジン
島という島で、(実際には半島)中にたくさんのロカンタ
(レストラン)がある。島のてっぺんからの眺めはまあまあ良かっ
たが、ほかに特筆すべきものはない。書いている方もいい加減疲れ
てきているのが、ここ数ページくらいから読みとれると思う。
さて、町に戻ってこのまま帰ろうとしたがここで一軒のスポーツ
品店を見つける。何でもセール期間中ということでトルコのチーム
のゲームシャツを安売りしていた。そこでMはいち早く一番カッ
コいいTRABSONTというチームのシャツを買う。ほかに幾つかあった
カスのようなものは他の三人が分けあった。