PART5〜ダンサーM〜

date5.gif (2815 バイト)

pl_kappa.gif (3223 バイト)

 我々は「GAZI TOUR」のミニバスで、カッパドキアの街、
ユルギュップに向かっている。運転手の隣に座ったMと
仏は、英語のできない彼とひたすらコミュニケーションを
とる。朝日が昇りだして眩しい。サングラスをかけ、陽気
なトルコ音楽を聞いていると、昨晩の不安が嘘のようだ。
昨日の怪しいトルコ兄ちゃんも、今はナイスガイに見える。
現金なものだ。

 さて、このバスは各旅行者をそれぞれのホテルまで連れてって
くれる。大体同じ年齢層だったためか、他の旅行者は安ホテルで
降りていく。ところが前述のとおり、われわれはイスタンブール
で超リッチホテルを予約している。そしてそのホテルの前で下ろ
される(7:00頃)。 「ここ以外はずっと安ホテルなんだよー」と
叫びたい衝動を押さえ、 「やっぱ日本人は違うな」とでも言いた
げな皆の視線の中をかいくぐる。被害妄想かな。

 ホテルのロビーは超豪華。4畳半くらいしかないアヤソフィアと
は比べ物にならない。天井が高く豪華なソファー、チェックインす
ると、なんとボーイが荷物を運んでくれた。部屋は豪華ながら落ち
着いた造りで、冷蔵庫、テレビ付き。奮発してよかったかも。シャ
ワーを浴びようとしたら何とすぐにお湯が出てきた。しかもタオル、
石鹸、シャンプー備え付き。9:30に迎えのバスが来る予定だ。それ
まで一寝入りしよう。

 9:30 GAZI TOUR の迎えのバスが来る。 GAZI TOUR の受付で、オ
ランダ人の家族と、目的地への途中でスペイン人のカップルと同乗
し、これに運転手のジンギスと、ガイドのアフメトを加えた12人
が、ツアーのメンバーとなる。

カイマクル

カッパドキアにはイスラム教の迫害を逃れ、地下に移り住んだ
キリスト教徒達の地下都市が無数にあるが、そのなかで最大の
ものがこれ。地下8階から成り、その特徴は綿密に設計された
排気口である。常に循環した大気を享受できる地上と違い、空
気のこもってしまう地下では排気口が非常に重要な役割を果た
すのだ。都市には台所、居間、食堂や教会までそろっている。
各年代の居住者によって拡張され、つぎはぎで拡大していった
都市はさながら迷路だ。デリンクユなど、他の地下都市とも
トンネルでつながっているそうだ。ここでイスラムの恐怖に
おびえ、細々と生活していたキリスト教徒たちが、宗教のみに
その心のよりどころを求めるのも無理はない。しかし年月を
重ねたあと、その悲惨な住居が観光地になる。時の流れの力強さ
には不思議な感動を覚える。突然観光客用の照明が消えて真っ暗
になるのはご愛敬といったところか。

カッパドキアの奇岩。各年代で形成される
地層が幾重にも重なり、固い層、軟らかい層の
入りまじりが、このような芸術的な(?)風景を
形作る。
地下の洞穴を探検。かつては
キリスト教徒の住みかであった。


ウフララ渓谷
  メレンディス川によって作られた、16kmにおよぶ渓谷。
切り立った両側の崖には、無数の教会や修道院が掘られ、
その壁にはフレスコ画を見ることができる。途中で魚を網で
とっているおじいさんや、羊を追っている子供達、木についた虫を
駆除しているおばちゃん達に出会った。ここの終点付近で昼食を取る。

キャラバンサライ
 かつて、シルクロードを旅した商人達のための宿泊施設。岩を
くりぬいたような造りだが、夏用と冬用があり、夏用は、
外の暑さにもかかわらず信じられないほど涼しい。おそらく冬用は
信じられないほど暖かいのだろう。ちなみに、二日間の宿泊は無料で
三日めから料金を取っていたそうだ。ここで休んでいる時、ガイドから
ナイトクラブに誘われた。M以外はあまり乗り気ではなかったが
曖昧な返事をしていたので行くはめになった。

 帰りのバスの中でオランダ人一家と幾らか話をするようになる。
兄妹はそれぞれリックとジェシカ。リックは中学生でラテン語が
好きだとのたまう優等生。ジェシカは、まだ英語が話せないがよく
笑う女の子。サッカーの話で盛り上がり、お父さんのメールアドレスを
教えてもらって手紙を書くことを約束する。

 その夜。約束通り我々はナイトクラブへ向う。迎えに来たのは
最初にカッパドキアに着いた時我々に声をかけた、あの怪しいガイドで
ある。夜の真っ暗な道をバスで行く。Mは割と気楽に考えていたが、
桃などは誘拐された、と半分あきらめていたらしい。

 着いたのは、郊外にある、岩をくり抜いたような形のしゃれたクラブ。
フリードリンクで$15。 我々はかなり安いと感じたが、むこうの
相場ではやはり大金のようだ。
 しばらく待っていると、20人くらいの団体客(おそらく外国人であろう)が
わらわらとやってきて、ほどなくショーが始まる。

 最初は期待していたベリーダンスではなく、フォークダンス
(民俗舞踊)で、民俗衣装をまとった男女が舞台の上で、生演奏を
バックに華やかな躍りを披露する。ガイドの話ではトルコの
西、東、南、北、など各地の民俗に伝わる躍りで、それぞれに
特徴がある。ロシアに近い地方はコサックダンスなども見られた。
 そしてクライマックス。どうやら結婚式を模したもののようで、
観客から新郎と新婦が選ばれる。新婦は隣のグループから外人の
女性、そして新郎には何と、我らがMが選ばれる。話の内容を
ざっとかいつまむと、要するにお姫さまが結婚相手を探しているのだが、
それに何人か候補が上がる。それぞれお姫さまの前で自己アピールを
するのだが、お金や体力、顔を自慢する男達はあっさりふられてしまう。
結局、心を捧げよう、という男が選ばれる、といういきさつだ。この
男の役割をMが請け負ったわけだが、舞台の上は騒がしい上、
踊り子達のそっとささやいてくる指示は聞きとりづらく、言われた
通りの演技ができなくて、しかも相手の女の人もよく分からなかったのか
Mをフってしまう始末。それでも何とか話を進め、キスシーンも
滞りなくすませた。さあ、いよいよメインのベリーダンスである。

 今までとは全く違う、派手な音楽が流れだし、踊り子の登場である。
ややインド系の、彫りの深い美人で、くねくねと官能的な躍りを
披露する。とても人間とは思えないような動きに我々が酔い始めたころ、
踊り子がテーブルにやってきてまた観客を舞台に上げる。このとき
選ばれたのが隣の席のおっさんと、またもやMである。M大活躍。
舞台の上で上着を脱がされてドキドキしていたが、躍りの真似をしろ、
というだけで特に気持ちいいことはなかった。もっともこんな経験、
誰もができるわけではなく、楽しませてもらった。席に戻った時ほかの
三人がしらけていたのが気掛かりだったものの、ベリーダンスの
あやしげな雰囲気にほろ酔い気分も手伝って、異国情緒に包まれた
カッパドキアの夜は更けて行く......

 

 

トルコ旅行のページへ
旅行のページへ