PART9〜桃K.O.〜
翌日、約束通り9:00に事務所に行く。ケレムはちゃんといた。
もう隣街までいってきてくれたのかな、と思って聞いてみる。
するとなんと、ケレムは突然英語が喋れなくなったいた。通訳の
少年を間に立て、トルコ語しか喋らない。そして出てきたセリフが、
「まだいってない。君と違って暇じゃないんだ。12:00にもう一度
来い。」
宿に帰ってみると桃がぐったりしている。今日出発できないに
しても、このムカつくホテルをチェックアウトしようと思ってい
たが、桃は動けないという。しゃくだがもう一泊ここですること
にした。値段は交渉しても変わらず。
桃がかなりしんどいらしい。ホテルの人間を頼りたくはなかったが
やむを得ず、医者を呼んでもらう。30分ほどしてきた医者は何と女医さん。
しかも超美人。とたんに桃は元気になる。それでも注射を打つというので、
ちょっとお金が掛かるかも知れないが、安心料と思うことにする。
問題はその場所だ。女医さんはおもむろに注射を取りだし、薬を注
入する。
「いつもは看護婦がやるからうまくできないわ。」
注射器に空気が入ってるようにみえたのは気のせいか。そして
一気に桃の体内に注入する。え?場所?...
それは桃本人に聞いて
もらうことにしよう。治療費は1500bin(3000円)。うち、往診費が
750bin。それは領収書が出ないそうだ。つまりそのぶん保険がおり
ない。どうにもボラれたような気がするが、人のいい仏に説得されて
あまりに懐疑的になり過ぎた自分に反省。
12:00。ケレムの事務所に行くがケレム不在。
桃はすっかり元気になる。カッパドキアからたまった疲れと強烈な
日差しに、荷物持ちの重労働が追い討ちをかけて疲労が噴出しただけ
のようだ。昼飯は外に食べにいく。近所をぶらぶらしていると盛んに
声をかけてくる。その中でしっかりとメニューと値段が表示されて
あったところに入る。値段が安く、料理も美味しかった。パムッカレでは
つらいことばかりだったので思わず涙ぐむ。見れば横では日本人らしき
東洋人が。「君はだまされないようにね。」
その後、仏と二人で次の目的地へのバスの手配をしにいく。行き先は
クシャダス。エーゲ海沿岸の美しい町だそうだ。この辺は
トラベルエージェンシーも多く、互いに仲が悪いようだ。いくつかの
グループに分かれ、観光客を捕まえては互いの悪口を吹き込む。
とにかく不快な町だ。幾つかまわって一番安い、「パムッカレ交通」に
決める。
その午後、皆疲れが溜っているだろう、ということでどこにも行かず
自由時間、ということになった。ハム男と仏は寝に入る。Mは特に
疲れてなかったのでプールで泳ぐことにする。カッパドキアの高級
ホテルのプールに比べると大分落ちるが、10×15mくらいの、まずまずのもの。
ただ周りに木がいっぱいあって、それはそれで気持ちいいのだが、
落ち葉がプールに落ちてくるのでちょっと汚ない。でも日差しが強く、
泳ぐには快適だった。やがて皆部屋から出てきて思い思いに泳ぐ。
半日は無駄ではなく、これ以降の旅に向けてのよいリラックスとなった。
晩飯。桃は油物は食べないように、と言われていたので残りの3人で
ホテルのガーデンパーティーで食べる。メインディッシュは鶏肉のケバブで
なかなか美味しかった。これなら昨日もここで食べれば良かった。
かなり人気のようで他のホテルからも次々に客がやってくる。ただ
300bin(600円)はちょっと高め。
夜、最後のチャンスと思ってケレムの事務所にいく。ケレムはいたが
サングラスはないという。あまり期待はしてなかったが日本の住所を
書いて、送ってくれ、と頼んでおく。
「責任をもって送る。」
というがまったく信用できない。
「ところでバス会社は決めたのか。」
「今日の昼、もうチケットを買った。」
「なぜうちのバス会社を使わない。」
「...」
翌日、8:30チェックアウト。ホテルのノートに日本語で散々悪口を
書いた後、パムッカレを後にする。