ブリュッセル旅行記

イギリス滞在中、ブリュッセルに週末旅行に出かけました。
「ヨーロッパの首都」ブリュッセルへはバーミンガム空港から1時間前後で
アクセスできますが、今回はユーロスターを体験するため、
あえてロンドンから出発しました。


8/17

旅行の予定は土日のブリュッセルだけですが、ユーロスターに乗るにはロンドンまで出てこなくてはいけません。乗り換え等々含めると時間がかかってしまうので、金曜日に仕事を終えたあとロンドンへ出て一泊、翌日朝イチでブリュッセルへ向かう計画を立てました。いままではロンドンへは主にSolihull駅から2.5時間ほどかけて行っていましたが、別の路線のBirmingham International駅からの方が本数も多く、イギリスの西側の基幹線であるため、1.5時間くらいで到達することを最近知りました。駅につくとDepartureのディスプレイ表示に、いきなり次のLondon Merylborne行きの汽車がCancelとあります。イギリスの鉄道は日本より遅れて民営化されましたが、そのいいかげんさは一向に改善されていません。4本のうち3本がDelay、数%がCancelという統計が出ていますが、Delayは諦めがつくものの、Cancelされると途方にくれてしまいます。列車の問題ならば次の便が出ますが、路線の問題だとその方面の便がすべてCancelされることもあります。幸い今回は次の列車は時間どおりやってきましたが、一本Cancelされると次が混雑し、座席に座れませんでした。参考までに、日本が誇る新幹線の遅れの、一本あたりの平均は23秒。これは台風や地震などによる大幅な遅れも考慮に入れてのものです。なお、イギリスの鉄道は5分程度の遅れは「OnTime」と表示します。
 ロンドンには日系のB&Bを予約しました。やや割高でしたが、部屋がとても綺麗で気に入りました。ロンドンのB&B事情は最悪で、50-60ポンドのB&Bでも部屋が狭く、汚いことが多いです。

 

 8/18

宿のお姉さんに目覚し時計を借りたのですが、うっかりアラームをONにするのを忘れていました。が、問題なく6:30起床。自慢じゃないが朝は強い。よっぽどのことがない限り自動的に目がさめます。国際特急ユーロスターはロンドンWaterloo駅から出ます。そこまで約15分。8:27発ですが、30分前にチェックインしなくてはならないので、余裕を持って7:00過ぎにB&Bを出ました。London Waterloo Internationalで改札を通ったあとには待合室があります。喫茶店やお弁当屋のほか、免税店、両替店などがあり、空港のようです。X線チェックはなぜか通らなくていい、といわれ脇を通されました。荷物が少なかったからでしょうか。

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Waterloo Internatinal駅はヨーロッパへの
玄関。駅というよりは空港の様相。

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発車のベルを静かに待つユーロスター。
イモムシに見えるのは私だけ?

 ユーロスターは白を基調に、黄、青のラインが入っています。ベルギー、フランス、イギリスの精鋭デザイナーがデザインしたスタイルですが、はっきり言ってあんまかっこよくない。腰が高いというか、重厚感がなく、色合いも安っぽい。300系(エアロ)の洗練された機能美や、700系(あひるちゃん)の芸術的なカーブを見ても、スタイリングは日本の新幹線の完勝です。

 汽車は予定時刻どおりWaterlooを出発しました。ブリュッセル行きはWaterloo、Ashford(英)にとまったあと、英仏海峡トンネルを抜け、Lille、Brusselに停車します。話には聞いていましたが、イギリス国内でのスピードは非常に遅いです。在来線と同じ路線を通るからでしょうか。バーミンガムからロンドンに来たときのInterCityのほうがよっぽど速いぞ。それにしても、だ。何だこの席は!新幹線より幅が狭く、奥行きも小さくて狭苦しい。完全固定式なので乗客の半分は進行方向後ろ向きに座らなければなりません(Mはこれが大嫌い)。それに、Mの席はちょうど窓と窓の間でぜんぜん外が見えない!ちゃんと設計しろ!実は帰りも同じ位置だったので怒り倍増。

 1.5時間くらいすると海峡トンネルに入りました。といっても単なるトンネルなので特に感慨などはありません。トンネルを抜けるとそこは仏国だった。

 フランスに入ると次第に速度が上がっていきます。で、あっという間にリールに着きました。リールで乗客の2/3くらいが降り、10分程度の停車後発車します。 リールを過ぎると車内放送の順番が、英語→フランス語から、フランス語→英語に変わり、ブリュッセル直前ではドイツ語も加わりました。地理で習った記憶がありますが、ベルギーはドイツ語、フランス語、オランダ語が入り混じる複雑な事情があります。ブリュッセル付近はフランス語が強いようです。12:00過ぎ、定刻どおりつきました。いいかげんな入国審査を終えるとすぐに市街に出られます。これが飛行機と違う、汽車のいいところ。

 が、駅を出てみて自分がどこにいるのかさっぱりわかりません。周りの音が全部フランス語になっているのって結構不安をあおる。トラム(路面電車)やバスが行き交っているけど、一体どの線がどういう風に走っているのやら。通りの名前はフランス語/ドイツ語(かな?)の2重表記なのだが、知らない言葉って固有名詞も頭に入りにくく、地図を読み解くのも一苦労。

 ガイドブックと地図と周りの雰囲気を散々見比べてやっとわかりました。てっきりユーロスターはブリュッセル中央駅に着くものと思っていたが、どうもブリュッセル南駅に着いたらしい。そうか、このGareっていうのは駅のことか。結構端っこのほうに着いたんだな。

 ホテルにチェックインし、ブリュッセル市内観光に行きました。一泊だけなので市内観光だけで一杯一杯でしょう。ベルギーの首都、ブリュッセルはEU本部があることで知られていますが、ヨーロッパの陸路交通の重要点でもあり、なかなか栄えています。ロンドン同様、建築物が保護されていますが、建築様式がロンドンのものとは異なり、また違った趣があります。また土曜日ということもあってか非常ににぎわっていました。各レストランやカフェは外にテーブルを出しており、みな陽気を楽しんでいます。

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道路にオープンテラスを出す店が多く、陽気も
手伝って大変な賑わい。
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昼食を取った店で。
ベルギーのビアグラスは独特。
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市内の移動はトラムが便利。すべての乗車区間で
55BF(165円)だが、誰もチェックしないので
ただで乗ろうと思えば乗れてしまう。
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ヨーロッパ最初のショッピングモール、
Galeries Royales Saint-Hubert。
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ブリュッセルの中心The Grand' Placeは四方を
古い建物に囲まれた広場。イギリスの建築とは
また違った様式の建物が並ぶ。
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The Grand' Placeの別方向。ここでいろいろな
イベントが行われる。花を絨毯のように敷き詰める
FlowerCarpetは有名。

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St-Micheal大聖堂は町の中心の協会。
中では礼拝が行われていた。

 

 夜。同じく英国に滞在し、ベルギー出張も多いA氏に、ベルギーは食べ物がうまい、という話を聞いていたのでちょっと楽しみです。夜は昼にもましてオープンガーデン(っていうのかな?)のレストンランが多く、ちょっと入った路地はテーブルといすと人と料理でごった返しています。そんな人々の様子を見ているだけでも楽しい。というのは口実で、一人旅はいつも食事をするところに苦労します。一人で食事をしている人なんてほとんどいません。
 みんなが食事をしている風景を楽しんでいるようで、実は必死に一人でも入れそうな店を探しつづけました。こういうときは客引きが逆にありがたいもので、呼び寄せる声にそのままついていきました。ベルギー料理っていうのはどういうものかちゃんと調べてこなかったのですが、肉、野菜、シーフードなど、バラエティに富んでいるようです。イギリスに来てからまともなシーフードにありついたことはないのでシーフードスパゲッティ、それにトマトスープを頼みました。シーフードスパゲティはメニューにないものを特製で作ってあげるよ、といわれたので楽しみです。まずはトマトスープ。ウマーイ!Mはトマトスープにはちょっとウルサイ。イギリスでもパブなどで何度か頼んだことがありますが、イギリスにあるのはトマトスープではなく、ホットトマトジュースです。もしかしたら日本でいうトマトスープって日本人向けにアレンジされてるのかな?と、自信をなくしかけていましたがそんなことはありません。おいしいトマトスープはおいしいのです。俺の舌は間違っていません。メインディッシュもメチャウマ。トマトソースだったのでトマトがカブってしまったが、ノープロブレム。ロブスター、ムール貝、イカ、エビ他たっぷりのシーフードで大満足。これにビール二杯で総額1700ベルギーフランは約4100円。ギャフン。

 

 8/19

 朝起きたら時計は9:00を指していました。ベルギー時間ではすでに10:00。朝は強いといっても起きる気がないとおきられません。朝食は10:30までなので慌てて地下の食堂に行きました。豪華なビュッフェでしたが昨日かなり食べたために胃がもたれていて、軽めにしておきました。

 町歩きは朝、日中、夜とその時刻によって印象が異なりますが、その町の「匂い」を感じ取れるのは、朝(それもできれば平日)に限ります。「匂い」という表現が文学的過ぎるならば直接的に「雰囲気」とでもいえば良いでしょうか。各町には必ず「匂い」があります。それはその町独特で、他の場所には絶対になく、しかしそこに住んでしまうとかすんでしまいますが、旅行者として訪れると必ず感じ取れるものです。ロンドンにはロンドンの、ニューヨークにはニューヨークの、台北には台北の、イスタンブールにはイスタンブールの、バンコクにはバンコクの「匂い」がありました。もちろん海外に限ったことではなく、京都や名古屋を初めて訪れたとき、信州や北海道を旅行したとき、それぞれの町の匂いを感じ取ることが出来ました。そしてこの匂いを感じ取ることこそ僕の旅行の本来の目的だというように、最近考えるようになったのです。 今回の朝寝坊はちょっと残念でしたが、ブリュッセルの匂いもちょっとだけ感じることが出来ました。昨日に比べてやや肌寒い気候の中、古い町並みに注ぐ、ガラス細工のような澄んだ太陽光線が人々のくつろぐオープンカフェの陰影を浮き立たせ、ほのかに甘いベルギーワッフルと香ばしいコーヒーの薫りが漂います。

 今日はブリュッセル郊外のBRUPARCK!に行ってみようと思います。郊外といっても地下鉄で20分くらい。ブリュッセルは小さめの都市なのです。BRUPARCK!は1958年の万博の跡地に作られたテーマパークで、大阪の吹田EXPOランドのようなところでしょうか。そこへ行くには地下鉄2号線を利用し終点駅で乗り換え、さらに1B号線でHazel駅でおります。Hazelとは知る人ぞ知るかもしれませんが、1985年のサッカーチャンピオンズカップ決勝、リバプール(英)対ユベントス(伊)がHazelスタジアムで行われ、リバプール側のフーリガンが暴動を起こし、死者30数名を含む死傷者100名の大惨事となった、「Hazelの悲劇」の現場でもあります。それ以降10年間、イングランドのチームは国際試合からしめだされ、ベルギーはチャンピオンズリーグの決勝の開催を永久に禁止されてしまいました。

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ベルギーの地下鉄。やたら角張っている。

 ところで乗り換えの、2号線の終点駅はなんていう名前だったかな…エーっと、なんて読むのか知らんけど、「SIMONIS」ね。ん?いま通り過ぎた駅のホームに「SIMONIS」って書いてなかったか?あれ?じゃあこの電車はこのあとどこに行くんだ?・・・やがて電車は真っ暗な(地下鉄だからあたりまえ)、何もない操車場のようなところで止まってしまいました。しまったー!閉じ込められた!どうしよう・・・

 すると、電車の外側を人が歩いていました。ドアをどんどんたたいて注意を引くとびっくりされてしまいましたが、何とか終点でおりそびれたことを告げました。運転手さんだったようですが、この電車は折返し運転だから10分もすれば動くよ、と教えられ、ほとんど英語は話せないようでしたが、折り返し「SIMONIS」の駅に戻ってくると、乗換えを親切に教えてくれました。ちょっとだけひやっとした。

 BRUPARCK!のシンボルは鉄原子を模したATOMIUMです。大阪の万博公園の太陽の像といい、万博の開催者は変なモニュメントを作らないと気がすまないようです。 まあでもATOMIUMは近くで見ると巨大でなかなか迫力がありました。9つの球が結合されていていて、中に入ることができ、最上階は展望台になっています。鉄の原子を模しているということですが、鉄の原子番号って9だったっけ?ええっと、スイ、ヘー、リー、ベ、ボクノフネ、と。鉄ってそんな軽かったかな?この設計者、構造計算はちゃんとしたのでしょうけど鉄の原子番号を調べるのを忘れちゃったようですね。
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BRUPARCK!のシンボル、ATOMIUM。Hazel駅から
見えるランドマーク。
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ATOMIUM展望台から見たBRUSSEL中心街。
2倍ズームじゃこれが限界。

 BRUPARCK!にはいくつかのテーマパークがありますが、ATOMIUMの次に、MINIヨーロッパに行きました。ヨーロッパの各都市のミニチュアを集めたものです。子供だましといってしまえばミもフタもありませんが、Mはこういうのが結構好きです。なかなか細部までしっかりと作ってあったし、電車の模型は一部ちゃんと運行しています。子供たちに混じって楽しんでしまいました。

 

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一番最初のミニチュアはEU本部。
ブリュッセルは(自称)「ヨーロッパの首都」でも
あります。
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デンマークのTRELLEBORG。かつてバイキングが
住んだ木造家屋です。
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ベルギーのDINANT。巨大な崖を背景にする
印象的な教会。
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昨日行ったGrand'Place。なお、本物のGrand'Place
からはエッフェル塔は見えませんのでご注意ください。
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ロンドンのシンボル、ビッグベンと国会議事堂
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Doverの砦(左上)からみおろされるDoverの町。
そしてその眼下ににCHANNEL海峡があり、
ユーロスターが海底トンネルをくぐりぬける。
「よくがんばったで賞」。
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オランダの風車は脇にあるハンドルを回すと
動き出します。
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Shakespeareの生まれ故郷、Stratfor-Upon-Avonは
もう何度も訪れました。

 思いがけず時間を使ってしまいました。ブリュッセル市内に戻ってきて、中心街のオープンテラスでコーヒーでも飲もうと思っていたのですがあまり余裕はなく、残念ながらベルギー南駅に戻り、そこのカフェで、絶品のエクレアとともに一服しました。

 滞在一泊だけと、とても観光といえるほど見て周れませんでしたが、ブリュッセルの魅力の、ほんの切れ端だけでも感じることができたと思います。 訪れる機会がまたあることを祈って、ロンドン行きのユーロスターの出発を待ちました。

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