『東京ジャパヌール』
「日本らしさを求めて」
日本らしい、というのは、ある意味冗談である。
日本とはそもなにであるかということを定めるのが不可能である以上、こういう探求には意味がない。 |
だから、このゼミで企画したこの「日本らしい」談義は冗談ではない切実なものがあった。 まじめに考えよう。これが、この本の企画のはじまりだった。東京23区に限って「日本らしさ」を構成してみよう。 観光的に日本らしいのは、歴史的遺産だけではない。ちょっと昔、といういわゆるレトロ造りもその候補になるかもしれない。あるいは、世界に冠たるマンガやアニメをフィーチャーした秋葉原や渋谷のポストモダン的賑わいもおおいに目玉になりそうだ。庶民の生活があふれている下町商店街や無機質なビジネス街にうごめくサラリーマン群や、ラッシュアワーだっていい観光ネタかもしれない。 問題は、これらをどう見せるかである。スポットだけでは、観光者には魅力がない。ヴェネチアは、どこをどう歩いても観光気分に浸れる。まず、面で構成していかなくてはならないのだ。日本らしい雰囲気を漂わせている界隈を再構築してみよう。そしておまけとして観光の魅力を発散する「点」もありだ。 企画をたてるのに春休みをすべてつかった。およその筋が見えたところで、14人は23区を手分けして、徹底的に歩き回った。連日のように都内へ取材に出かけ、ネタを発見する作業を繰り返した。そう簡単に「日本らしさ」がころがっているわけではない。 こうやってほぼ一年を費やし、夜遅くまで、毎日のように作業をした成果がこの「日本らしさ」のレポート的ガイドブックである。あたらしい東京がこれで少しでも見えてくれば幸いである。 ![]() |