プロローグ

 

 

ヨーロッパを鉄道で周ろう…

イギリス勤務が決まってからなんとなくそんな休日を描いていた。
ようやくとった遅い夏休みは9月8日の土曜日から2週間。だが一日でも
有意義に使うため、金曜日の仕事終了後出発、ロンドンで一泊してから大陸に渡ろう、
と考えていた。

ところが金曜日の出発が予想外に遅くなってしまった。プロジェクトマネージャーのベンと
言葉の特訓をしていたためだ。

「フランス語をしゃべってみろ」
「ボンジュール」
「ドイツ語をしゃべってみろ」
「グーテンターク」
「イタリア語をしゃべってみろ」
「チャオ」
「スペイン語をしゃべってみろ」
「オラ」

「よし完璧だ。行って来い。」

こうしてオフィスを後にし、ぎりぎりの電車に飛び乗ってロンドンに向かった。