【50】 25〜27/MAR/2002
エピローグ

 

25/MAR/2002 -Mon- A氏

 日曜日A氏の家に泊めてもらい、彼の出社にあわせて家を出た。
 地下鉄を降りるとき、UK風に軽く握手してわかれた。
 A家に初めて来たのはこっちに来て2ヶ月ほど起った時、6月の終わりだったと思う。
まだ美紅ちゃんは生まれていなかった。あの頃、ようやくUKでの生活になれてきたものの、
周りに日本人もおらず、UKのいろんな慣習に戸惑っていて、結構心細い思いをしていた。
それ以来何度もロンドンの自宅に泊めてもらい、こちらでの生活のしかたや日本の情報を
教えてもらった。なにより日本語で心置きなくいろんなことを夜遅くまで話すことが出来た。
A氏一家には感謝の言葉もない。

 A氏の家からはロンドン市内へは地下鉄一本。ユーストン駅に荷物を預け、
最後のロンドン観光としゃれこんだ。
 ロンドンの観光にはオープンのダブルデッカー(2階建てバス)を利用した、
「Hop on Hop off」が最適。ロンドン市内の観光名所をほぼ網羅し、だいたい10〜15分
ごとに来るバスに自由に乗り降りして市内をまわれる。市内をまわるだけなら
METRO(地下鉄)の方が断然速くて安い(一日券4ポンド)が、移動そのものも観光の
一つで、観光名所だけでなく、ロンドンの町並みそのものも楽しめるし、なにより
ライブでの観光ガイドが楽しめる。昔はテープのガイドをイアホンで聞くのが主流だったが、
最近はガイドが乗って楽しい中継をするバスの方が多くなっている。

 

wpe20.jpg (4454 バイト)
このところ天気がよく、今日も好天。
トラファルガー広場のネルソン提督も
今日は一段と凛々しく見える。

wpe1F.jpg (6661 バイト)
無印良品はMUJIのブランドで
ユニクロに先駆けてUKに展開している。

 

wpe26.jpg (11487 バイト)
幸運なことに、ホースガードの騎兵隊の行進に
出くわした。バッキンガム宮殿からマーブルアーチまで。

wpe28.jpg (13165 バイト)
世界的に有名なマダム・ダッソーの蝋人形館に行こうと思ってたんだけど、
月曜日だというのに恐ろしい列が出来ていたのでやめ。そばにある
シャーロック・ホームズ博物館にいった。ホームズの舞台となる
ベーカーストリート221bに、小説の設定をそのまま再現した博物館。
上の写真はホームズとワトソンがいつもくつろいでいた居間。

wpe2C.jpg (8965 バイト)
ちゃんとトイレもある。なかなか赴き深いトイレだ。

wpe29.jpg (11868 バイト)
博物館の前にて。

 

 

wpe2B.jpg (9711 バイト)
その後もう少し観光して、ユーストン駅から
バーミンガムへ向かった。バージントレインの
赤い特急もこれが乗り納め。

 

 

 

 気分はもうすっかり帰国モードだが、実はまだ解決していないことがある。水道、電話、
そして家の保証金の払い戻しだ。前二つはちょっともうあきらめた。しかし後者は
1190ポンド(24万円)と、とてもあきらめられるような金額ではない。
 もともと退去日を決めるとき、27日出発と伝えてそれに間に合う日、として先週の
火曜日に決まったのだ。それを先方の都合で(連絡なしに)ずるずると延ばし、
木曜日にインスペクションを行った。そして保証金の払い戻しは小切手になるが、
エステートエージェンシーの小切手にサインできる担当者が毎週金曜日にしか
来ないそうで、小切手の発行はその日以降になる。郵送になるとまた
遅れるので、先週土曜日に直接そっちのオフィスに行く、と伝えてあった。
ところが金曜日、向こうから電話があり、急遽担当者が来られなくなったので
まだ小切手が発行できない。担当者は改めて土曜日、あるいは翌月曜日に
来るので、小切手が発行出来次第、直接持っていって郵便受けに
入れておく、と伝えられた。で、先週土曜日には届かなかった。したがって
遅くとも今日には届いているはずである。
 6:00ごろ、家に着いたが、当然のようになんにも届いていなかった。もう
どうなってるんだ、一体。水曜の午前中出発だから明日には銀行口座をクローズ
しなくてはならない。小切手は銀行なり郵便局なり、なにかしら口座を持っていないと
換金できないので、それまでに小切手を受け取らなくてはならないのに。
 エステートエージェンシーに電話したが誰も出ない。仕方がない、明日の
朝イチで直接オフィスに行くか。まったくなんでこんなに気を揉まなくちゃ
ならないんだ。

26/MAR/2002 -Tue- コリン

 今日がいろいろな事務処理のできる最終日。とにかくなにがなんでも保証金だけは
とりかえさないと。こんな最後の最後までもめるとは思わなかった。
前もっていろんな状況を想定してみた。

1.「小切手は用意したが、何かしらの理由で昨日までに手渡すことが出来なかった」
 →むかつくが一応解決。
2.「昨日ちゃんと渡しましたが…」
 →ありえないと思うが、これが実現するとちょっともめそうだなあ。
3.「小切手にサインの出来る担当者が、やはり、土、月と来られなかった。
 →ならば今、現金で払い戻すように。それがそちらの責任。
4.「3.と同、かつ、どうしても今すぐ現金による払い戻しは出来ない」
 →銀行口座を閉じた後は小切手は無意味。日本の銀行口座に送金するように。
  当然費用はそちら持ち。
5.「担当者が風邪を引きました」
 →風邪薬を持って来たので今すぐ治せ。

 いずれにしろ、先方の、小切手にサインを出来る担当者が金曜日にしか
来ない、というのがネックだなあ。そんなのこっちの知ったことじゃないのに。

 さて、カジュアル服で行くとなめられそうなので、わざわざスーツを来て
くっそたれエージェンシーのドアを空あけた。

「CampbellsGreenの前のテナントだが、昨日までに保証金の小切手を
受け取ることになっている。どうなっているのか?」

「CampbellsGreenの方ですね。ええと、保証金ですか?インスペクションは
お済みですか?あ、先週の木曜日に終えていますね。保証金はいくらでした?
1190ポンド。はい。わかりました。(後ろの男性に伝えて、男性がさらさらと
サインする)。ハイ、小切手です。どうぞ。出発はいつですか?明日?あら、
ぎりぎりでしたね。よいフライトを!」

俺は何か悪い夢でも見ているのだろうか…。





 その後、その足で銀行に向かい、小切手の換金(2日ほどかかる)後、
預金をすべての日本の銀行に送ってもらい、完了とともに口座を閉じる手続きを
行った。銀行はこの国のサービス業では数少ない、まともな業務を
行ってくれるところで、応対も親切丁寧なので安心できる。

 

 

 

 出発の便は明日の朝。最後の夜はコリンと簡単にSolihullで食事をした。
コリンは去年6月くらいに来た新人で、香港出身。とにかくお喋りで、しゃべるか
食べるか寝てるかのどれかしかない、典型的な中国人だ。でもいつも
週末になにかしら企画を持ってきてくれ、とかく一人で過ごしがちなMや
ダニエルの外国人勢を含め、ニールやフランソワ、フィリップなどを誘って
遊びに行ったものだ。最後の3月は一緒の家で暮し、家の保証金などで
バタバタしているときもいろいろ相談にのってくれたりした。

27/MAR/2002 -Wed- エピローグ

 出発の便は10:55。ちょっと早めに起き、コリンと最後の挨拶を交わす。天気はよいものの
まだちょっと肌寒い。UKの桜は日本より開花が早く、今がほぼ満開の時期だ。それに
つられるようにこれからいろいろな花が咲き始め、サマータイムに切り替わる頃から本格的な
春になるのだろう。日差しの色合いが冬仕様からすっかり変わり、次第に濃さを増していく
準備をしているように感じる。そんな風の薫りを感じていると、そうだ、一年たったんだな、
と思ったのでした。