4日目 −ウッドマンスタンの町−


  


 二日酔い気味でなかなかおきないHさんを尻目に9:30のコーチでロンドンへ向かう。今日はウッドマンスタンへ行った後、少しロンドンの南へ行ってどこかで一泊する予定。田舎町で人気のコッツウォールズ、子供のころ訪れたことのある海のリゾート地ブライトン、フランスへの入り口ドーバーなどいろいろ心惹かれるが、今のところは「聖地」カンタベリーに行く予定だ。もっとも、特に予約があるわけではなく、気ままな一人旅、その時の気分で決めよう。

ウッドマンスタンへはヴィクトリア駅かキングスクロス駅発の汽車で行けるが、コーチの終着点であるヴィクトリアのほうが便がいい。

ヴィクトリア駅でまず早めの昼食をとることにする。毎日毎日マクドナルドじゃ芸がないので今日はサンドウィッチの「SubWay」にする。安全圏から出ていないことには違いないけど。日本のSubWayと違い、サンドウィッチのメニューが決まっているのではなく、パン、トッピング、マスタードなどを一つ一つ注文するタイプ。BNL内の食堂を思い出す。セットメニューのポテトチップスの種類を聞かれたときは戸惑ったけど。どれでもええっちゅうねん。

窓口で切符を買う。「地球の歩き方」で当日帰りの切符は「Day Return」ということを頭に叩き込み、目的地「WoodmanStern」は普通に言っても通じないと思ったので時刻表の駅名を指しながら説明。恥も外聞もないが要は通じればいいのだ。往復で4ポンド(800円)は思ったほど高くない。

EastCroydonの駅で乗り換え、WoodmanSternへは約40分。子供のころはロンドンはすごく遠くに感じたけど、大した距離ではなかったのだ。イギリス流、窓から手を出して外側から開けるドアを出て、ホームに降り立った。

イギリスで珍しく、天気は3日続いて快晴。ちょうどいい気候の中のWoodmanStern駅は郊外の住宅街の中にある。ホームからは陸橋を上って道路に出る。この陸橋は記憶に残っている。4歳から6歳に住んでいたころ、ここを渡って帰宅する父を待っていものだった。

道を歩いているとなんとなく見覚えがあるようなないような。でもせっかく来たんだし、と無理やり自分をノスタルジーに埋め込んで歩いていたが、母に渡された地図をよくよく見ると、駅の反対側に出てしまっていたようだ。

通っていた学校

気を取り直して歩き出す。今度はいくつか見覚えのある場所が出てくる。しばらく歩くと学校が見えてきた。ここには小学校に入る前の、6歳以前の子供が通うクラスもあり、そのことはよく覚えている。校庭は二つあり、道路に面しているほうはアスファルトで、天気のいい日は裏の、もっと広い芝生の校庭が開放された。当時はその裏の校庭は無限の広さがあったように思っていたが、今は自分の小ささがおかしく見えてくるくらいせまい。もっとゆっくり見ていたかったが授業中、バックパックをかついだ怪しい東洋人が除いて写真なんか取っていたら何を言われるかわからないのでそそくさと通りすぎた。線路の下をくぐる陸橋を通りすぎ、住宅地の坂に出てきた。イギリスの住宅地は日本と違いすべての家がほとんど同じ形をしており、その景観はとても美しい。まず最初に住んでいたナットフィールドロードの家に行く。

 

印象深かったのか、それとも単にアルバムの写真が多いだけなのか、この家はよく覚えている。初めて自転車を買ってもらったときブレーキのかけ方も知らないまま乗り回し、半地下のガレージへ下り坂一直線で突っ込み、血だらけになったこともある。次に引越し先のホワイトソーンアベニューの家に行く。ここの家は比較的記憶が薄い。この家の庭は奥が森に続いており、よく散歩しにいったものだった。

緑の豊かなこの住宅地は、天気のよさも手伝っていい気分にさてくれたが、懐かしい家も当然今は別の人が住んでるわけで、あまりぱちぱちと写真を撮るわけにも行かず、ちょっと所在がなくて一時間ほどふらふらして駅に戻った。


 


 午後3:00過ぎにロンドン戻った。次の行き先は電車の中で「地球の歩き方」を熟読した結果、カンタベリーにする。カンタベリーもロンドンヴィクトリアが発着駅で、リターンチケットで17ポンド。カンタベリーにはカンタベリーイーストとウェストの二つの駅があるようだがヴィクトリアから行くのはイーストのほうだ。この辺はトーマスクックの時刻表ではよくわからない。やはり鉄道で動くときは現地の時刻表の入手は必須だ。

駅についたのは6:30ごろ。といってもまだまだ日が高く、昼過ぎといった感じしかしない。イースト駅から陸橋を超えると城壁に囲まれた町に入る。カンタベリーは6世紀、ローマからキリスト教の不況に来た聖アウグスティヌスが本拠としたところで、以来イギリスのキリスト教の総本山的な位置付けにある。歴史的な趣が深く、またイギリス的な静かな風景が非常に魅力的な町並みだ。カンタベリーカテドラル(大聖堂)など見所は豊富だが、とりあえず今日は宿を探さねば。

 

カンタベリーの町のイーストゲート

イーストゲートからまっすぐ入り、トラベラーズインフォーメーションセンターへいった。ところが、なんと6:00でクローズド。うーん、弱ってしまった。「地球の歩き方」に載っている地図は貧弱で、宿の位置がわからない。せめて地図だけでも入手しようと思っていたのだが。仕方がない。センターの前に掲示してある地図を書き写し、自分の足で探すことにした。ところが、ちょうどバンクホリデーで3連休となる前の金曜日のため、地球の歩き方にある安宿はどこもいっぱい。仕方がないのでちょっと高そうなホテルに入る。値段を聞くと45ポンド、約9000円はかなりの出費。しかしだんだん時刻が遅くなって弱気になり、結局ここに決めた。宿のおじさんはイギリス紳士といった感じで、町の観光ポイントやレストランを紹介してくれた。晩飯はそのおっちゃんが紹介してくれたインド料理で、エールとスープとタンドリーチキンをいただく。

夜、シャワーを浴びた後、隣の部屋が家族連れなのだろうかやたらうるさかったが、昼間かなりの距離を歩いたためか、あっという間に爆睡した。