PART1 −バンコクへ−

 


 社会人二年目。ようやく休みのとり方のコツを会得したわれわれは、夏休み、久々に旅行に行く計画を立てる。目的地はタイ。仏がすでに2回、バックパッカーとして訪れているのと、桃子のご両親がバンコクに駐在している、というのがその理由だ。また、成田からの本数が多く、お盆真っ盛りの時期に往復66000円という破格の値段も決め手となった。


 

出発前の成田第2Tr.



 さて、寝坊して起こされるもの、待ち合わせの電車に乗り遅れそうになるもの、その中でコーヒーをこぼす者など、相変わらずの面々だが、とりあえず成田には着いた。ここで航空機のチケットを受け取る。旅行代理店のH.I.Sからは引換券をもらうでもなく、ただ場所を指定されただけなのでめっちゃ不安だったが、問題なく搭乗手続きに入る。われわれの乗る飛行機はインドの航空会社、「エアインディア」である。ボンベイへの便の途中でタイによるのだが、この2つバックパッカーの聖地を訪れるだけあっていかにもそれっぽい人々が多い。でっかいバックパックを背負った人、やたら荷物が少なく、汚らしい人、ひげもじゃの人。われわれの隣のカウンターで搭乗手続きをしていた長髪の、オレンジジュースの1リットルパックを手に持った人は、何やら誓約書のようなものを書かされている。

 程なく飛行機に乗り込む。このエアインディア、週に2便しかないためか成田では迫害されており、搭乗口はターミナルビルから最も遠いところに追いやられている。飛行機の窓にはインドの寺院の模様がおのおのついており、ちょっと異様で、搭乗の際、身体検査までされるものものしさだったが、サービスは非常によく、サリーを着たスチュワーデスが親切に対応してくれる。何より飯がめちゃくちゃうまい。2,3種類の中から選んだカレーだがさすが本場だけあって、日本の辛いだけのカレーとは違いコクがあり、またデザートのババロアも絶品。映画王国インドの映画も上映されており、すっかりマハラジャ気分。本場のインドティーをすすりながら、次第にインドへの期待が高まっていったが降り立ったのはタイです。






 当日は王妃のお誕生日ということで、休日だったため、桃のお父さんが空港まで迎えに来てくれた。VOLVOにお抱え運転手という目もくらまんばかりのお出迎えに、今までにない旅の予感がひろがる。空港の駐車場で車に乗り込むがどうも前後の車が近すぎ、とても出せそうにない。運転手のソンポンさんはどうするのかな、とみていると、えいや、とばかりに後ろに駐車していた車をごろごろと動かしてしまった。後で聞いた話だが、タイでは駐車するときにはハンドブレーキは引かず、手で押してスペースを作るそうなのだ。

 ついたのが午後6:00過ぎだったのでその日は観光をする予定はない。ただ、まず換金をしなければならないので「EMPORIUM」という高級デパートに向かう。そこで一万円札を換金したのだが、後ろに並んだやつがなれなれしく、お札を見て「イチマンイェン」としつこく聞いてくる。ああそうだよ、と半ばうっとうしく思いながら振り返ると、その男声を発していたのは女性だった。というか、いわゆるオカマというやつである。タイでは多いと聞いていたがいきなりめぐり合うとは。

 その後、タイスキ(タイ風なべ)で有名な「コカレストラン」に行き、タイ式マッサージを終えてきた桃ママおよび桃妹たち女性陣と合流して、初めてのタイ料理を賞味した。タイ料理とは基本的に辛いもの、というイメージの人が多いと思う。それは間違いではないが、タイ料理を象徴するのは「辛さ」ではなく、「パクチー」という香草による、独特の風味である。これは人によっていろいろで、もうこれがなくちゃ物足りない、という人から、入っているのさえ気づかなかった。という人までいる。ところがMはこの風味がだめで、残念ながらその後もタイ料理を心から楽しめなかった。ちなみにこのコカレストランのような高級店ではパクチー抜きでも料理してくれる。

一日目の夜は桃宅に泊めてもらう。桃の妹2人と友達一人、さらに桃、仏、Mの計6人もの外来が来て大丈夫なのかと思ったが心配ご無用。ご両親の住むアパートは寝室が4部屋あり、そのすべてにトイレ・シャワーがあるという念の入れよう。エアコンの効いた部屋で翌日の心配を何もせず、安らかに眠れるたびというのもいいものである。明日は桃ママおよび桃妹たちとホアヒンのビーチへ行く。






市民の足「シーロ」内