Date: Tue, 11 Mar 1997 17:51:51 -0500
From: Miyachi Takahiko miyachi@tokyo1.phy.bnl.gov
Subject: From N.Y. IV --- Turnig Point

 


*皆さんお元気でしょうか。Mです。

* ニューヨークに来て二つ目の週末は天気に恵まれました。実験開始が近づいて来ているので段々周囲があわただしくなってきていますが、そんなことに気をとられている場合ではありません。"FROM N.Y." 第4段です。


 


3/9(土) 

土曜日は、我々の分野の日本のボス、京大の今井さんという人が来ているため、ミーティングをしなければなりません。ノー残業デー月間なのに。今井さんは、京都にいるとき講義を取っていましたが、字は小さいは声は小さいは顔はデカイはで授業になりませんでした。

退屈なミーティングは昼過ぎに終わりました。マンハッタンに行くには中途半端な時間なので近くにある、OUTLETのモールに行くことにしました。アメリカではこのOUTLETモールが結構たくさんあり、ブランド品などのB級品が2、3割引くらいで買えます。マンハッタン郊外にあるWoodbury Common Factory Outletsなどが有名ですが、ロングアイランドにも割と大きなものが一つあります。ここにはブランドものの店はあまりないのですが、NIKEの工場直営店があります。

グループの人と二人で店に行きました。土曜日ということもあってなかなかの賑わい。日本でも大ブームのNIKEのシューズ、こちらでも大人気です。日本での値段は良く知りませんが、たぶんこっちはむちゃくちゃやすい。最低ラインは$39.99、一般的なもので$59.99 - $79.99 くらいです。もちろん$100 を越える高価なものもありますけど。ただ、問題はサイズが全然ない。靴の選びかたとしては、まずデザインを見るのではなく、ストックを見ながらサイズがあるものを見つけ、それでディスプレイを見上げて初めて評価するという形にならざるを得ません。ところで、最近の流行りのこのゴツゴツした感じの靴、Mはあまり好きではありません。どちらかといえば、俺らが高校くらいのときに流行った、new balance の様な、シンプルだけど洗練されたカッコ良さ、みたいなんが好きなんだけど、流行りものがカッコ良く見えないというのはオヤジになったってことかな。そんで、結局靴は買わずに、$5.00とかいうふざけた値段のT シャツをいくつか買いました。どうでもええやつへのお土産にしようと思うので、これもらったやつはMにとってその程度の存在だと思って下さい。ちなみに川田の言ってた日本で人気沸騰中のAir Nomo Max、山積みされてました。




3/10(日)

前日、Mの小三 ホンイツ ドラドラが火を吹いて幕を開けた戦いが朝の5時までつづいたため、しんどくて今日ははグダグダしようと思っていたのですが、10時に目を覚ますと抜けるような青空が広がり、イッキにパワーがみなぎりました。マンハッタンへ行こう。 

ここ2、3日、降ったりやんだりの鬱陶しい天気が続いたので、ドライブ日和の快晴の中、切れ味抜群の安全運転を誇るMもややオーバーアクセル気味。495号を西へ西へと行くとやがて巨大なビル群が浮かび上がってきます。夜景や雨の中の摩天楼もいいですが、やはり晴天の中が一番だ!TOSHIBA の巨大な看板を過ぎて街の中へ滑り込みます。

ペンステーションのそばに車をとめました。前回はミッドタウンから北のほうへ行ったので、今日は南へ向かおう。

マンハッタンは京都のような計画都市で、東西、南北に碁盤の目状に道が走ります。南北の通りをAvenue, 東西の通りをStreetといい、日本語ではそれぞれ「…番街」、「…丁目」と表現するのが通例のようです。ジモティーにならってブイブイ信号無視をしてあるいて行こう。けど、彼らは堀川通りや環八ほどの道を平然と渡って行きます。なかなか真似をするのは難しく、なんか熱いお風呂に入る前に足をチョコチョコだしてるような状態におちいったMです。 

ペンステーションのある34丁目から南へ、10数丁目付近のソーホーと呼ばれる地域に来ました。ここは芸術家の卵たちの集まる地域で、洒落た小物屋や、ちょっとしたギャラリーがあり、感じのいい町並みです。ただ日曜日ということで店はほとんどあいてませんでした。途中の公園でちいさなフリーマーケットをやっていて、ブラッとよってみました。白黒の、センスのいい絵はがきが売っていたので思わず買ってしまいましたが、Mは旅行をしては絵はがきを買い、結局出すことなく引出しの奥で埃にまみれてしまいます。こいつらもその運命をたどることでしょう。

その後、さらに南へ向かいます。マンハッタン島の最南端、自由の女神が見えるバッテリー(砲台)公園へ行こうと考えました。しかしさすがにそこまで歩いて行くのは無理なので、地下鉄を使わざるを得ません。ところがMは今まで一度も地下鉄を使ったことがない。とりあえずおそるおそる階段を降りて行きます。「地球の歩き方」には、「N.Y.の地下鉄は複雑で、行き先をしっかり確認しないととんでもないところにつれて行かれてしまう。ホームをちゃんと確認して乗るように。しかし、電車にかいてある表示も間違ってることがあるので注意するべし」とあります。そんなん、どうやって注意すんねん。

とにかくトークンを買い、ホームに入ります。あんまりキョロキョロすると旅行者だと思われてねらわれるかも知れませんが、しかし今のMにそんな余裕はありません。ブルックリン行きの列車に乗りましたが、はたして正しいのに乗ったのか知る統べもありません。車内放送は何いってるかわからないので今、どの辺を走ってるのかもわからない。なんかジャンキーか酔っ払いか知らないけど大声で歌ってるし。かばんを腹に抱え、ハリネズミの様にまるくなってひたすら耐えるしかない。

4、5個目の駅で降りました。もし正しい電車にのって、Mの距離感覚が正しければ、バッテリーパークのやや北に出るはず。でも、変なところに出てしまったらどうしよう。とにかく地下にいたのではどこにいるのかわからない。恐る恐る階段を登って行くと…やりー!!ワールドトレードセンターのまん前、予想どおりだ!有名な二つのツインビルが空にむかってのびています。

世界経済の中心、ウォール街を抜けると、N.Y. 金融マン達の憩の場バッテリーパークにつきます。パフォーマー達が、いろんな音楽を奏でたり、中国雑技団のようなアクロバットを披露したりと、非常に活気がありました。ただ、ここから見える自由の女神はあまり近くなく、迫力はいまいち。もっと近くで見たい人はフェリーで行くものらしいですが、列がかなり出来てたのでめんどくさくてやめました。 

ここでぶらぶら30分くらい時間を潰した後、北へ戻りましょう。帰りの地下鉄は乗り方も把握したしすっかり余裕が出て、楽勝気分です。座席に座らずドア横の「ササヤスポット」から乗客を観察。48丁目の駅で降りて、階段を一段とばしでかけ上がる。太陽のまぶしさになれたら、とろとろ歩く旅行者を追い抜いて、ジモティーよりも早く赤信号を渡る。何だか目つきもクールになって、おおまたで、肩で風を切って歩く俺ってば、ちょーかっこいー!!

すっかり自分に酔ったまま50番通りの紀伊国屋にきます。ここで本を買って、中のカフェで一休み。ここは、駐在員やその家族を対象にした店で、店員もお客もほとんど日本人なのでほっとします。ただ日本の書籍、特に雑誌類は古い上に非常に高い。

さあ5:30をまわったところ、本日のメインイベント、ヘリコプターツアーに向かいましょう。これはさる友人(猿じゃないよ)からのスペシャルレコメンデーションがあったもので、マンハッタンをヘリコプターからぐるりと眺める、大抵のガイドブックに載っているゴージャスなツアーです。

6:00過ぎくらいにLiberty Hellicopter Tourに到着。officeの人達はすごく親切で、他の客がおじさんおばさんばかりだったと言うのもあるのだろうけど、気さくにいろいろは話しかけてくれました。

3、40分ほど待って、いよいよヘリに搭乗。段々暗くなってきた空の下、号音をたて、すごい風を巻起こすヘリに押し込まれます。パイロットをいれて6人程度の小型ヘリ。前後二列に並びますが、Mは好運にも前列窓際の特等席にあたりました。


パイロットの奇声と共にゆっくりと機が上昇して行く。高度が上がるにつれて次第にマンハッタンの容貌があらわになって行きます。

藍に沈みかけ、オレンジ色の光を浮かび上がらせる摩天楼の印象を表現する言葉を探すのは難しい。30丁目付近からハドソン川上を南下し、右にニュージャージーの住宅街、左にマンハッタンの高層ビル群が見える。南端の、先程谷底を歩いたウォール街のビル並は圧巻だ。ライトアップされた自由の女神を二度旋回し、イーストリバーを北上して行くと左手にエンパイヤやクライスラーなどマンハッタンを代表するビルをはるか下に見る。絵はがきやテレビのCMでよく見る絵ではあるが、切り取られていない分雄大で、時間がながれている分 生命力に溢れ、立体感がある分鮮烈で、しかしいくら言葉を並べても現実の風景の前には説得力を失ってしまう。強烈な印象はメールを書いてる今でも残っています。

と、まあMがあんまりマジになっても笑われるだけなので、今日はこのくらいにしといたらあ。





3/11(月)

スポーツ、オペラ、演劇、その他もろもろのエンターテインメントの中心と知られるニューヨーク。去年はミュージカルを二つ見ましたが、今年は「ジャズ」に挑戦です。Mはあまり興味はありませんでしたが、ジャンルに限らず生演奏というのはいいものだし、何故か物理屋にはジャズ好きが多く、誘われるままに参加しました。 

アメリカの生んだ唯一のオリジナルアートといわれるジャズ・ミュージックはご存知の通りニューオーリンズで産声をあげ、やがて1920年代にニューヨークのハーレムにその中心を据えた。スタンダードナンバーの「A列車で行こう」は、地下鉄ラインA にのってハーレムに行こう、と歌った曲である。その後、中心は52丁目のミッドタウン付近へとうつるが、50年代後半からの地価高騰の煽りを受けて、他の芸術分野と同様、グリニッジ・ヴィレッジへと南下して行き、現在に至る(参考:地球の歩き方)。 

今日では、自身から派生したソウルやブルース、さらにそれらから派生したロックなどにミュージックシーンの主役を奪われてますが、それはジャズの後退を意味するのではなく、クラシックミュージックと同様、芸術作品として一つ高い段に昇華したととらえるのが正しいと思います。

で、月曜日は「マンデー フル オーケストラ」と呼ばれ、多人数の(十数人くらい)のやや規模の大きい演奏が聞けます。そしてこの日は、秋吉敏子というN.Y.在住の、有名なピアニストが出るということもあり、5時早々に仕事を切り上げてマンハッタンに向かいました。 

今日の495号からの眺めは夕焼空にシルエットだけを浮かび上がらせる摩天楼。一体、マンハッタンにはいくつの顔があるのでしょうか。

まず、リトルイタリーで食事を取ります。グループの一人が、以前から是非、といっていたイタリアレストランへ。味音痴のMでも、あまりのうまさにちょーびっくりー。請求書見て2度びっくりー。 

ジャズクラブは日本にもある「Blue Note」や、「Sweet Basil」が有名ですが、今回我々の向かったのは「Bird Land」。他のクラブよりも広く、ゆったりとした作りだそうです。秋吉敏子さんが演奏されるからでしょうか、商社マンと見受けられる日本人がいっぱいきています。さらにNHKのテレビクルーもきてました。もし日本でそれっぽい放送があったら見てみて。Mの雄姿が見られるかも。料金はミニマムチャージが$30で、後は飲み物代のみと非常に良心的です。日本の「Blue Note」では1万円前後するらしいです。


演奏は9時から10時すぎまで1時間ちょっと。ちょうどいいくらいかな。Mはちょっと苦痛になり始めたところでした。まあ、でもそれなりに楽しめました。やっぱり生演奏というのはいいですね。しろうとの感想ながら、特にドラム(ジャズでもドラムって言うのかな)とベースの音がいいと思いました。機会があったらまた行きたいですね。アホなMは秋吉敏子さんにサインもらっちゃいました。ちょっと場違いだったかも知れません。

BIRD LANDのグリーティングカードと秋吉敏子さん直筆サイン

 




*先週末の報告終わり。日曜日に行ったマンハッタンは、今までで一番良かったと思う。 

*冒頭にもかいたとおり、段々忙しくなってきたので今週末は遊びに行けないかも知れません。時間はあるけど、なんて言うか、雰囲気的に。まあしょうがないか。

*こっちにきて2週間、ちょうど折り返し地点ですが、金を使いまくって、後$200ちょっとしかない。日本円はあるんだけどこっちで買えるとすごいレートが悪い。しばらくはおとなしくしているかな。

*今度のメールでは、遊びに行った報告ではなく、一般的なWeek dayについて書こうと思います。話のネタはいろいろ考えてるから楽しみにしててね。



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