題名:[112:miyachi@ieux01.]
NEW YORK IV
Date: Wed, 27 Mar 96 00:33:44 +0900
From: miyachi@ieux01.ins.u-tokyo.ac.jp (Takahiko Miyachi)
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* 先日の土曜日、二回目のマンハッタンに行ってきました。といっても実験が走ってるので休みをもらうわけにも行かず、睡眠時間を削っていって来ました。遊びに行くのも楽じゃない。 * 土曜日。1時からシフトに入って、7時にちょっと繰り上げて交代してもらうまで仕事をし、7時30分に出発。マンハッタンへはこのロングアイランドから約一時間半くらい車で飛ばします。日産SENTRA。日本では見掛けないがこちらではよく走ってる。クラスからいってサニーでしょう。ニューヨークの交通事情は東京にも増してひどいが、土日はほとんど渋滞しない。 * 本当はバスケが見たかったんだけど、なんとNEWYORK KNICKS も NEW JERSEY NETSも、はてはホッケーのNEWYORK RANGERSまで、MADISON SQUARE GARDENでの試合はない。仕方がないので大枚はたいてまたミュージカルを見ることにしました。金曜日に 「CAT'S」を予約。これは何年か前のトニー賞を受賞し、15年近くのロングランとなっている代表的な作品です。時間は2時からなので午前中は街をブラブラする事にしました。 *ニューヨークについたのがだいたい9時前。ファースとフードで朝飯を食って「地球の歩き方」をパラパラと見ます。だいたいこんな朝早くあいている店や美術館などは存在せず、どうしようかな、と考えていたら、エンパイアステートビルの展望台が9時半から入れることを見つけました。混んでいるのでちょっと並ぶ、という記述もあったので今から向かってちょっと早めにつけばちょうどよいではないか。エンパイアステートビルは5番街38丁目でここから目と鼻の先。
* 土曜日とはいえまだ9時過ぎ。そんなにならばなくて済むだろうという考えはすぐに否定されました。入り口のホールに人だかりができていて、先頭まで約100メートル。ちょっとうんざりしましたがほかに行くところもないので列の後ろにつきました。僕の前は外人のカップルで一分おきにキスしてるのがうっとうしい。程なく開場となってわらわらと列が動き出します。いったんエスカレーターで地下に降り、そこでチケットを買います。外人はまだいちゃついてます。そしてまたエスカレーターで2階に上がり、そこから高速エレベーターに乗ります。エンパイアステートビルの展望台は88階。僕が行ったことのあるもっとも高い建物であるサンシャイン60の上を行ってます。エレベーターのなかは階数を表示するデジタルの表示盤がひとつあるだけで殺風景です。皆がそれに集中しているのですが、「2」からなかなか進みません。高速というわりにはそんなに速くないんだな、と思っていたらいきなり「10」となりました。そして「20、30、40、50、60…」。ここでサンシャインを追い抜き、M史上最高到達点に達した、と思っているMはアメリカに飛行機できたことを忘れています。外人はさらに濃厚にキスをしています。空気が薄くなってきたので分けあっているのでしょうか。やがてエレベーターの速度が落ちていき、「70、75、78、79、80」となって80階に到着。別のエレベーターに乗り換えて88階につきました。この展望台は建物の周りをぐるりとバルコニーが取り巻いている形で、屋外から景色が見えます。そこからの景色はマンハッタンをEAST RIVERとHADSON RIVERに挟まれた半島状の地形がよく分ります。前のメールでも書きましたが東京や大阪とは街の規模が違い、360度に渡って巨大なビルが連なり、全く地震を恐れてないな、ということが伺えます。南の方に目を向けるとウォール街のビル群のはるかむこうに自由の女神らしきものが見えます。「らしき」というのは余りに小さくて判別できないためです。しかしあれは自由の女神に違いない。いや、自由の女神だろう。じゆうのめがみだといいなあ‥、と仏ディーが使いそうなオチでしめくくったところでビルを降りましょう。 * ミュージカルの始まる2時まではまだ3時間ほどあります。そこで今日の目的のひとつ、紀ノ国屋で日本語の本を買うため、5番街をフラフラと歩きながら北上していきました。マンハッタンは計画都市で、京都のように南北、東西と碁盤の目状に道が走っています。縦のみちを街(avenue)、横のみちを丁目(street)で表しますが、この5番街はマンハッタンの中心の大通りでシャネルやティファニー(ティファニーで朝食を、の舞台になったところである)などの高級品店、高島屋などの高級デパートなどの間に日本でいえばカメラのサクラヤのようなディスカウントショップやジーンズ屋などが並んでいて、ウィンドウショッピングには飽きません。 * あるCD屋の前を通ると、新譜が$11.99で売ってました。ロングアイランドでは$16.99だったのでかなり割安です。入ってみると店員は黒人か腕に入れ墨のあるスパニッシュ系ばかり。「地球の歩き方」にはそういう店でぼったくられた、という話が結構でてたのでちょっとためらいましたが安さにひかれてCDを物色しはじめました。しかしどうも集中できず、BGMに合わせて「イヤッホー」とか叫んだりする声にビクッとしたりして、思う存分探せませんでした。まあそれでも新譜2枚に旧譜($9.99)1枚、TAXこみで$35ちょっと。なかなかいい買い物をしました。
* 34丁目から紀ノ国屋のある50丁目までは結構歩きます。途中で「ニューヨーク市立図書館」を見つけました。1911年に建立され、460万冊の蔵書を誇る巨大な図書館です。休憩がてら入ってみることにしました。図書館のクセに非常に立派な作りです。正面玄関に立ってるライオンの像は有名なものらしい。中にはいると3階くらいまで吹き抜けのロビーがあってじゅうたんが敷き詰めてある。左右にゴージャスな階段があって左の階段の踊り場では美術学生らしき連中がデッサンをしている。建物自体美術価値のあるものなのでしょう。図書館と行っても、ずらーっと本が並べてあるわけではなく、広い廊下の左右に幾つもでっかい扉がついていて各部屋に別れて蔵書があるようだ。図書館というよりも本の博物館、といった趣きです。3階のオリエントコーナーに行きました。ここの受付のおっちゃんは東洋系の顔立ちですが愛想の悪さから行って中国人でしょう。ここで金曜日の朝日新聞を読み、五輪予選突破の感動をしばし楽しんだあと、ちょっとばかり寛いででていきました。廊下にリンカーンの肖像画があり、いかにもアメリカだなあなんて思いながらよく見るとリンカーンではなくただの初代館長だったりして。 * 紀ノ国屋は思っていたほど立派ではなく、まあふつうの本屋と代わり映えはしません。二階だての一階が書籍に簡単な喫茶店、二階がまんがと文房具です。雑誌は結構高くて(日本での2倍)しかもめちゃくちゃ古く、「NUMBER」はラグビーの日本選手権の頃だし、サッカーマガジンは何とストイコビッチがMVPのトロフィーをもらっている写真が表紙です。結局、比較的新しい「週刊朝日」と文庫本一冊、さらに「CATS」の日本語解説書を買って$20弱。店員は日本人で客のほとんども日本人でした。 * 12時を少し回ったところで、飯を食う前に予約したチケットをとりに行くことにしました。ウィンターシアターは50丁目のブロードウエイ沿い。ひたすら西に歩いていくと黒いバックグラウンドに目が二つ書いてあるお馴染の看板が目に入ってきます。とりあえず予約したチケットを受け取り、飯を食うことにします。 * ミュージカルのチケットに$75はたいたのでハンバーガーなどで$5で済まそうと思ったんだけど、すぐ目の前に「さらしな」という日本料理屋があり、自動的に入っていってしまいました。店員は皆日本人のようで、オーダーも日本語で済ませます。天とじうどんと鉄火巻きのセット、TAX,TIP込みで$21。 * 2時までもう少し時間があったのでそばのディスカウントショップに入りました。レイバンのサングラスが$25から売ってます。トルコでとられたので、舞台が終わったらひとつ買おう、とチェックを入れます。ここの店はわりと大きな店で、おみやげなんかも売ってます。もっともニューヨークのおみやげなんて自由の女神の絵のはいったマグカップや、エンパイアステートビルのキーホルダーといった程度のものばかりだけど。おっちゃんが「スッケベーソフトあるよ」と話してきたのを振り切って劇場に向かいます。 * 「CATS」のストーリーはあってないようなもの。「猫の天国」に行ける猫を決める際にそれぞれが自己紹介をし、ちょっとしたハプニングが起って最後はハッピーエンドというもので、前回見た「レ-ミゼラブル」とは重々しさが全く違います。ただその分、歌や踊りに力を入れていて、「レ‥」が物語中心であったのにたいし「CATS]は歌、踊り中心といったところでしょうか。帰りがけにはいきおい余ってCDを買ってしまいました。 * 舞台のあと、予定通りサングラスを探しました。どこの店も怪しげなのでなかなか入りづらいのですが、えいやとばかりそのうちの一軒に入りました。時計やサングラス、CDなどを売ってる典型的なディスカウントショップで、ショーケースを見てたらイタリア系といった感じの親父が話しかけてきました。あまり店員と関わりあいたくなかったけどまあわりと親切に説明してくれます。ここに二つの選択肢がある。今年のモデルを買うか、少し古いのを買うか。レイバンである。アルマーニは高くてちょっと手がでない。今年のモデルは$150。わりと安いとは思うが収入のないMには大きな出費である。古いのは$49。($25というのもあるが余りにかっこ悪い。)その差$100。しかし新しいのはめちゃくちゃかっこ良く、古いのは今一つである。さあ、君ならどうする?所詮、サングラスなどは目ん玉を隠す黒ガラスに過ぎない。それに来年になったらこの$150の方も旧型になってしまうのである。大事なのは「レイバン」というロゴだけだ…… TAXを含めて$55払うと「JAPANESE?」ときいてくる。「YES」とこたえると *帰りの車の中で今日一日を整理してみました。エンパイアステートビル、図書館、紀ノ国屋、CATS。買ったものはCD、本、サングラス。サングラス?なぜ俺はほしい方を買わなかったんだろう。安いとはいえ、日本円にして¥6000である。もし全く使わなかったらどぶに捨てるようなものだ。袋から出して眺めてみる。どうもやぼったい。やっぱりモデルが古いんだ。というわけでこのグラサン、売りに出します。¥7000でどう?
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