朝起きたら時計の針は9:00。ブリテン時刻のままなので一時間早いフランスでは10:00だ。
このホテルには朝食はつかないので、昨日の夜食用に買ってきたタルトの残りを食べる。しかし
このタルトもまためちゃめちゃうまいのだ。甘党で知られるMだが、実はあまり甘すぎるのは 好きではない。イギリスのお菓子ってチョコレートもレストランのデザートもやたらめったら甘いの だが、このタルトはほのかな甘さに押さえている。それにこのプルプルした触感と、もっちりした 皮がうまい。
チェックアウトを済ませ、ホテルを出て驚いた。かなり寒い。天気はよいのだが、ヨーロッパでは 9月は秋なのだろう。今回、上着を持ってこなかったのは失敗した。恐らく今後も必要になる だろうから、なにかはおるものでも買っておこう、とおもい、途中のスーパーでセーターを買った。 249F(4000円)はちょっと予想外の出費だ。
まずは地下鉄でシャルル・ド・ゴール・エトワール駅まで行く。凱旋門の最寄駅だ。凱旋門は ナポレオンが、自分の凱旋用に作らせたものだそうだが、結局ロシア遠征に破れ、門を くぐったのは死体のみだった。とりあえず彼の無念を晴らすため、凱旋してみた。 凱旋門はお金を払えば屋上まで行ける。意外に高さがあり、遠くまで見渡せる。 この凱旋門はその周りがロータリーとなっており、そこから360度放射状にのびる道路は パリの町の各方面に向かっている。エッフェル塔は凱旋門より遥か高くそびえている。南東 方面に伸びる道路はフランスきってのショッピング街、シャンゼリゼ通りで、そこからまっすぐ コンコルド広場まで続き、大観覧車が見える。足元のロータリーはパリの中心で多くの車が ぐるぐる回っており、そのうちバターになるのだろう。フランスの自動車は右側通行なので、 ロータリーの回り方はイギリスの反対。
凱旋門を後にし、シャンゼリゼ通りをまっすぐ、コンコルド広場に向かった。コンコルド広場は 悲劇の王妃、マリーアントワネットが処刑された広場。処刑には多くの市民が集まったそうだ。 マリーアントワネットについては遠藤周作の「王妃マリーアントワネット」(新潮文庫、だったかな?) がおすすめ。 ここには大きな観覧車があり、それをボケっと見ていて気づいたのだが、この観覧車、よく止まる。 最初は何秒かに一度、定期的に止まって景色を見る余裕を与えているのかな、と思ったがどうも そうでもない。全く不定期に止まる。ちょうどスキーのリフトのように。降りるのに失敗するやつとか いるのだろうか。
そこからエッフェル塔まではちょっと距離があるが、とにかく天気がよく、町歩きが気持ちいいので 歩いていってみる。エッフェル塔はどこからでも見えるし迷うこともない。
エッフェル塔の手前でお昼にしよう。塔が見える、ふもとのカフェで、ミックスオムレツとコーヒーを 頼んだ。はっ!エッフェル塔が見えるカフェで、紺色のハイネックセーターを着、サングラスをはずす俺。 もしかしてパリジャン?パリジャンじゃん!
エッフェル塔は基本的には東京タワーと変わりないのだが、赤白でなく、さび色に塗られているので 町の情景のとけて雰囲気を出している。ただ展望台に登るには恐ろしく長い列ができていたので やめた。
さて本日最後の観光、ルーブル美術館に向かおう。ルーブル美術館については説明は要らないだろう。 世界○大ミュージアム、といった呼称ってよく聞くが、そしてそれはときと場合によっていろいろ変わるのだが、 このルーブル美術館と大英博物館だけは必ず含まれている。イギリスやスペイン、オランダやポルトガル、 あるいは中国など、歴史上一度でも世界の頂点に立った国は、このように世界各地から強奪してきた 美術品を収めておく倉庫の言い訳としてミュージアムと呼ばせるのだ。大英博物館に比べ、考古学品 よりも絵画などの美術品が多い。もっとも18:00閉館で入ったのが17:00前だからあまり見て回る 余裕はない。とにかく来たことの証し、「モリ・ナカ」、間違い、「モナ・リザ」だけでも見て帰ろう。ルネサンスの 巨匠、レオナルド・ダビンチの名作だ。 しかしデカイ。最初は「モナ・リザ」を目指してゆっくり他の絵を見ながら進んでいこう、と思っていたのだが この広さ、余裕を持っていったら閉館時間に間に合わない。しかもよくよく地図を見たら今いるのは 「モナ・リザ」のあるドノン翼の正反対、リシュリュー翼で、反対側に渡るには建物をぐるっとまわらなければ ならない。時間が迫り、だんだん駆け足になっていった…。が、モナ・リザ直前で時間切れ。美術館は 奥から閉めていくらしく、モナ・リザのある部屋は17:45の時点ですでに入れなくなっていた。仕方が ないので、「モナ・リザはこっちですよ」ポスターでも撮っておいた。
 「モナ・リザはこちら」。まあ、これでよしとしよう。
 中央のガラスのピラミッドが入り口。地下を経由して建物に入る。 |
 とにかく巨大なルーブル美術館。 |

「もうつかれた〜」 「だめだよ、せっかく来たんだからポイントだけでも押さえないと」
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ルーブル美術館を堪能した後、一度ホテルに戻って預けてあった荷物をとりに行く。 17:00にとりに来る、って言ったけど19:00をまわってしまった。


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そのまま荷物をまとめて、今夜の夜行が出発する、パリ・オーステルリッツ(Gare d'
Austerlitz)駅へ向かった。
荷物預かり所で荷物を預けた。夜行の発車時間は23:14なので余裕はたっぷりある。ベンチに座ってぼんやりと人並みを眺めていた。 昔、長淵剛主演のドラマで「家族ゲーム」というのがあった。オチこぼれ兄弟に破天荒な家庭教師がつく、という話だが、この兄弟のうち、優等生だがいじめられっこで、人になかなか心を開くことのできないお兄さん(しんちゃんっていったかな?)のセリフで、こんなのがあった。
「ぼく、駅を見るのが好きなんです。いろんな人が行き交い、出会い、別れていく。それぞれにそれぞれの人生がある。そんな風景を見ていると時のたつのを忘れるんです。」
Gare d'
Austerlitzはスペインや南仏への長距離列車の発着駅だ。日曜だというのに携帯電話と話しながら足早に過ぎていくビジネスマン、スーツケースを引き、コートの襟を立てて颯爽と歩いていく背の高い女性、夜逃げしてきたのかと思わせるほど大きな荷物に押し出される大家族、おじいちゃん、おばあちゃんと両手をつなぎながら、見るものすべてが興味の対象になる小さな男のこ。南方系の人たちは感情表現が大仰で、家族、恋人のみならず、女性同士、男性同士でもそこかしこで出会い、別れの熱い抱擁が交わされている。夕暮れ迫るパリでそんな光景を見ていると、次第に頭が空っぽになり、落ち着いた気分になっていくのであった…。 |
司会者 「さあ、盛りあがったところでパリの点数をいっせいに、どーぞー!」
ドゥルルルルルルルルルル…
「10点10点10点10点10点10点10点10点10点10点 合計はぁ…」
ドドン。
「100てーん!」
司会者 「おめでとうございます!今回初の満点!まあ、確かに街歩きの心地よさは格別でしたね。 パリは緑が多くて歩道も広いので町全体の雰囲気がいいんですよね。天気に恵まれたというのも 大きいんですが、まあロンドンとパリでどちらが晴れる可能性が高いかということを考えれば、 運も実力のうち、といったところでしょうか。どうでしょうか?ナポレオン・ボナパルトさん。」
ナポレオン 「まあ満点はでき過ぎかもしんないけど実力通りかな。パリはきれいでしょ。なにが いいって言うんじゃなくて、町全体がいいよね。歩くのが気持ちいい街ってありそうでない。 観光名所はどうだった?丸一日でも全部回るのは到底無理だろうけど。ああ、凱旋門行ったんだよね。 どうだった?よかったでしょ。あれって最初、別のところに作ったんだけどあまりにしょぼいんでつくり直させたんだ」
司会者 「ああ、カルーゼル凱旋門のことですね。でも結局凱旋できなかったんじゃ残念だった でしょう。」
ナポレオン 「そうだなあ。ロシア遠征は相手に負けたというより季候に負けたね。冬将軍とか 言ってわけわかんねーよ。でも我輩は猫である、なんって言って調子に乗りすぎた、ってとこは 否定できないな。」
司会者 「我輩の辞書に不可能はない、でしょ」
ナポレオン 「あれ?そうだったっけ?まあ、いいや。ところでさあ、今回凱旋門、シャンゼリゼ通り、 エッフェル塔と世界的な観光地を歩いたのになんで写真がいちまいもないの?」
司会者 「う…、それにはわけがありまして」
ナポレオン 「なに?撮ってなかったの?」
司会者 「いや、そう言うわけではありません。かなりいい写真を一杯撮りました。ここに挙げない 理由は旅行記を読み進めていけばじきわかると思います。」
ナポレオン 「出し惜しみしてんの?あとでいい写真特集!なんっていってワサっとだすつもり?」
司会者 「そうでもないんです。パリの写真はこれで終わりです。」
ナポレオン 「わかった!もしかして…司会者「以下次号っ!」
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昨日の夕食は節約したので、今日はレストランに行こう。が、このオーステルリッツ駅はちょっと外れたところ のようで、周辺にはレストランはない。地下鉄に乗ってまた中心街に行ってもよいのだが…。今日一日、 ほとんど歩き詰めだった。さっき30分ほどベンチに座ったあと、さて行動するか、と動き出したとき体の節々 が痛んだのを感じた。体が重く、かなり疲れているようだ。そこで駅構内のレストランでお茶を濁すことにした。 駅構内といってもそこはフランス、おいしいものを出してくれるだろう。 「今日のおすすめメニュー」のようなものがあったのでそれにした。65F(1100円)は ヨーロッパのレストランとしては安め。スターターの何とかかんとか、に、メインはハムのステーキ、パスタ。 それにビールを頼む。では、早速いただこう。
ぱく。
ま
ず
|
い
!!
このスターター、ケチャップ味の漬物のようなもの。中身はオリーブの実と、これ、ラッキョウだ。 俺、ラッキョウ嫌いなんだよなあ。それに温かくも冷たくもない。ぬるい。それにこのメインディッシュの ハムのステーキって、やっぱり無理があるよなあ。そもそもこのハム、塩味がきつすぎて辛い。 それにパスタ、ぐずぐずで気持ち悪い。あーあ。フランス料理だからって必ずしもうまいわけではないんだな。 昨日のテイクアウトチャイニーズの方が100倍ましだ。
人間、疲れているときにまずいものを食べると、引き金になって体調が悪くなることってないだろうか? それにもともと強くないのにビールを飲んでしまった。食事の後、疲労感に加えてだるさが加わった。 それに胸焼けも残る。明らかに体調が悪くなっきている。これから16時間の汽車のたびなのに…
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