第9日(9月15日)


 9:00起床。
 荷物をまとめ、リヒテンシュタイン候国へ向かう。

 リヒテンシュタインはチューリヒから約一時間、SARGANS(ザルガンス)という駅に行き、そこから
バスに乗る。このバスはPOSTバスと呼ばれ、各町の郵便局を結んでいる。鉄道で行くこともできるが、
本数が少ないのでバスの方が便利だ。
 Sargansの駅はそれなりに大きな駅で、特急でも止まる。トラベラーズインフォーメーションセンターで
バスの時刻表をもらってみてみると、このPOSTバスは小さなこの国のほとんどの地域を網羅しており、
少なくとも30分に一本はあるので便利そうだ。SARGANSから首都VADUZまでは3.5SF(240円)、
30分程度の道のりだ。アルプスの山々を縫って走るバスの窓からの景観は、小さいながらも
美しいこの国への訪問を歓迎しているようだ。

 

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司会者 「すっかりおなじみになりました観光地採点、チューリヒの得点はどうでしょうか!
さあ、得点をいっせいに、どうぞー!」

 

 

 

 

 

 

 

ドゥルルルルルルルルルル…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「8点8点7点7点7点9点9点8点7点8点 合計はぁ…」

 

 

 

ドドン。

 

「78てーん!」

 

司会者 「おや、意外に低かったですね。ちょっと天気が悪かったかな?2度目の訪問ということで
新鮮味がなかったのでしょうか?どうでしょう、オイラーさん?」

オイラー 「確かに天気がわるかったのはいたかったっす。でもそれだけじゃなく、チューリヒの
『ウリ』っていうのかなあ、これこそチューリヒっていう景観がなかったような気が…。確かに
町並みはすごいきれいなんだけど、それだったらパリだってロンドンだって同じっす。」

司会者 「なるほどねえ。たしかに他との違いっていう意味では特徴に欠ける街でした。」

オイラー 「前回来たときは確かみんなでチーズフォンデュを食べたっす。ああいうイベントがあると
一気に盛りあがるんだけど、今回は夕食は軽食で済ませちゃったし。」

司会者 「やっぱり1人ですと、どうしてもレストランに入るのって気が引けますから。
これがクリアできるようになると、旅の楽しみがぐーっと広がると思うんですけどね。ところで、
オイラーさん、ひとつ伺いたいのですが、
あなただれ?

オイラー 「なにー!スイスの天才数学者、オイラーをしらないっすか!?ショックっす!?数学だけ
じゃなくて、物理、工学など、オイラーの名前が出てこない日はないのに…」

司会者 「そんなこといってもこれ、旅行記ですし…」

オイラー 「よくわかった。今、声を大にして言おう。おいら、オイ…ブチッ… 

 

 

 

 

 

ツー・ツー・ツー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 VADUZ

- リヒテンシュタイン -
通貨/1スイスフラン=68円
公用語/ドイツ語

 

 

 リヒテンシュタイン候国は一応独立はしているが、実質はスイスの一地域、といった感じで、通貨、
言葉他各制度はスイスに準ずる。オーストリア以東のヨーロッパはハプスブルグ家の支配が強いが、
この国もハプスブルグ家に使えたリヒテンシュタイン家が1719年にファドゥーツとシュレンベルクを
統一したことに始まり、1866年に独立した。リヒテンシュタイン候を君主とする立憲君主国で、
日本の皇族とも交流があるそう。これはそそうのないようにしなければ。
VADUZは首都とはいえ、それほど大きな街ではなく、夏は登山、冬はスキーで訪れる観光客を
迎え入れる、東西を大きな山に囲まれた美しい街で、あまり大きな建物は見当たらない。
 POSTバスの終点で降り、まずはトラベラースインフォメーションセンターに行って、今夜のホテルの
確保だ。センターのお姉さんは英語、フランス語、ドイツ語を華麗に操り、各国からの訪問客を
さばいている。観光案内から、ホテルの案内までしてくれる。

お姉さん 「どんなホテルがいいですか?」

M 「一番安いホテルをお願いします。」

また、ここのインフォーメーションセンターでは、普通入国審査で押されるスタンプをパスポートに
押してくれる。イギリスをのぞくヨーロッパでは国境はあってなきに等しく、ほとんどの場合出入国
手続きはない。しかしこんなインフォーメーションセンターで希望者だけ押してもらうなんて、
まるで記念スタンプじゃんか。

お姉さん 「2SFになります。」

ただじゃないの!?

リヒテンシュタインの情報は、持参したガイドブックには記載が1ページしかないので、ここのセンターで
いろいろ観光情報を入手した。さすが観光立国だけあってパンフレットなど綺麗でわかりやすいものが
豊富にそろっている。

紹介してもらったホテルはセンターから歩いて10分くらい。でもこのへんまで来るとすでに
建物がまばらになってくる。本当に小さな街で、すべて歩き回るのに30分くらいであろう。
ホテルLagd Gasthof Au(なんて読むのかわからん)は一泊60SF(4000円)、バス・トイレは
共同だが、朝食付き。木目調の部屋は今までのホテルの中で一番広く、清潔。登山客や
スキー客を宛てこんだロッジのようなところだ。唯一気になったのは、トイレの水を流すボタンが
30cm四方くらいと、やたらでかかい。最初はどうやって流すのかわからなかった。

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Lagd Gasthof Auはじめ、Vaduzのホテルは
登山客向けのロッジのような雰囲気。

 

 

 

ちょぴっと休んでから観光にくりだす。

 本当に小さな街で、北の端と南の端で交わる、4,500mくらいの2本の道に挟まれた、三日月状の
地域に建物が集中する。
 リヒテンシュタインは美しい切手を発行することで知られている。各地からはがきを出す、という
企画にうってつけではないか。土曜日なので郵便局はしまっていたが、土産物屋が山ほどあるので
そこの一件に入り、12枚買った。が、どれも普通…。何か記念切手のようなものでないとだめなの
だろうか。

 ところでこのリヒテンシュタインという国、旅行者は多いのだが、日本人にはマイナーで、名前も
知らない、っていう人もいるのではないか。ある意味、こんなマイナーなところに来る自分に酔っていて、
帰国したら数少ない旅行体験者として各方面から地図などの資料提供依頼、旅行記執筆依頼、
原稿料は100万円でいかがでしょう…なんてことも考えていた。

で、まわりをみまわすと、

 

日本人いっぱい…

 

 さすがどこにでもいる日本人。女のこ2人組みが2組、親子連れ1組、登山客と思われる4,5人の
男性、自分と同じ一人旅と思われる男性。14,5人のおばさんの団体ツアー客もいる。こりゃあ
原稿料100万円は無理だな…。

 

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St.Florinカテドラルは街の
南端にある。
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同じく街の南端にある‘GovermentBuilding‘。
何かの官庁だろうか。
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Vaduzの街を見下ろすVaduz城

 

 

 

 昼食後、Vaduz城(Schloss Vaduz)に行ってみた。ここはリヒテンシュタイン候の末裔    が
現在も住居としているところで、山の中腹にあり、Vaduzの街を見下ろすようにたっている。
Vaduzのシンボルのような建物で、下から見上げるのも悪くはないが歩いてものの30分の道程だ。
中に入ることはできないが、今度は逆にVaduzを見下ろす景観は、このあたりが舞台となった、
アルプスの少女ハイジの背景を思い起こされる。もう少し晴れていればもっとよかったのだが…。
そう言えばトラベラーズインフォメーションセンターにハイジの絵本があった。でも絵は日本の
アニメの、かわいらしいものではなく、ピカソの絵のようなアバンギャルド風だった。ハイジも
いろいろ大変である。

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Vaduz城。城というにはこじんまりしている。
中には入れない。
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城付近から見えるVaduzの街。
反対側に見える山はスイス領だ。

 

城の周りを散策し、ゆっくりしと山を降りてきてホテルに帰った。さて、夕飯まで少し時間があるので、
今後の予定を立てよう。このリヒテンシュタインからは鉄道の便があまりよくなく、加えて明日はがくんと
本数の減る日曜日だ。ゆったりとすごすのにいい街だし、もう一泊して月曜日に動き出すのもいいかな。
ま、とりあえず時刻表と路線図を見てみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーマス・クックがない…

 

移動の多い旅なので各地域を移るときにものをなくさないよう、以下の7つの携行品は出発の際、必ず
チェックしていた。財布、カード入れ、カメラ、時計といった貴重品、パスポート、情報源のガイドブック、
そしてトーマス・クック社のヨーロッパ時刻表。そのトーマス・クックがないのだ。今朝、チューリヒを
出たときは確認したのを覚えている。もう一度リュックをひっくり返したが見つからない。念のため、
たちあがってみたがお尻にしいていたわけではない。そうだ、確か今朝チューリヒ駅で出発前、
手に持って歩いていた。あの時どこかやったか?そう言えばキャッシュポイントでお金をおろした時、
ATMの上においたんだ。もしかしてあのままか…?

しまった…。

トーマスクックにはヨーロッパのすべての国の主な路線の時刻表、および路線図を掲載している。
各駅間の時刻表はその駅に行けば手に入るが、乗り継ぎがある場合は情報がないし、だいたい
いつも宿で明日の予定を決めるとき、どうしたらいいんだ?簡単な路線図はガイドブックに乗って
いるけど、大都市しか乗ってないし、その都市に直接行くならばともかく、乗り継ぎ駅や時間など
調べようがない。そして何よりも、Mは時刻表を見るのが好きなのだ。計画を立てることそのものも
好きだが、特に実際に行く予定はなくても、うーん、○○に行くには××で乗りかえるのか、乗り継ぎの
時間が短いから気をつけないとな、など思考をめぐらす一人遊びがひとつの怪しい趣味でもある。
 しかしよりによってトーマスクックをなくすとは…。次の予定地をいろいろ考えてみたが、
トーマスクックがないと、なんていうか、目隠しをされたまま歩きまわされているような感じで全然
予定が立たない。しょうがない、明日また考えよう。

 

 Vaduzの街は登山客やスキー客の滞在が多いので、各ホテル、レストランを備えているところが
多いようだ。こういうところなら一人で行っても全然安心。オーストリアの名物である仔牛のカツレツに
今日のスープはポタージュであった。素朴な手作り風の料理はトーマスクックを失ってしおれた体に
じんと染み込んでいく。ちょっと大げさか。でもスキーや登山で疲れて帰ってきてこの料理を食べたら
ホッと和むであろう。料理は21SF(1400円)、コーヒー3.5SF(200円)は部屋にもって帰ってもいいよ、
といわれたので、ゆっくりとくつろぎながら味わった。

 

 

 

 宿題の答え:

 ヨーロッパの中で面積の小さな国は、順にバチカン市国(0.44km2)、モナコ公国(1.49km2)、サンマリノ公国(60km2)、そしてリヒテンシュタイン候国(160km2)。