第10日(9月16日)

 7:30に目がさめた。
  昨日10:30に寝たから9時間も寝てしまった。

 ヨーロッパでは日曜日は極端に汽車の便数が減る。大都市間を移動する長距離列車にのるなら
ともかく、VADUZからはどこへ行くにも乗り継ぎが多くなるので今日動くのはあまり得策ではない。
もう一日この町にいて、明日動き出そう。

 とはいえ、朝から雨が降っており、あまり観光日よりでもない。あの灼熱地獄のスペインの気候は
どこへやら、山間部のこの街は気温も低く、雨の日はセーターを着ていても寒い。あんまり無理して
外に出る気がしないので、雨がやむまで部屋でごろごろすることにした。
が、本当にただ「ごろごろ」するだけって、すごく苦痛である。普通はテレビを見たり本を読んだり
するのだが、この部屋にはテレビはないし、唯一持ってきた暇つぶし本、有栖川有栖の「朱色の
研究」はもう2回も読んでしまった。暇つぶし用にミステリーを持って来たのは失敗だった。やっぱり
ミステリーものって一回読み始めたらとまんなくなっちゃうから。
 ガイドブックをぱらぱらめくったがあまり面白くない。しょうがない。哲学でもしてみるか。
人はなぜ生きているのだろう。グゥ…。

 ちょっと眠った隙に11:00頃になってしまった。外を見ると晴れてはいないものの雨は上がった
ようだ。よし、少し観光してみよう。生の便器は乾きやすいっていうからまた雨が降り出さない
うちに出かけよう。

 

 Vaduzの街ははっきり言って見るところは見た。毎週日曜日、日本語のガイドがつくウォーキング
ツアーがあるそうなのだが、8:00出発なのでもう遅い。そこで、少し足を伸ばし、バスでMalbunの
町に行って見ることにした。Vaduzはスイス側の国境沿いだが、Malbunはオーストリアとの
国境沿いにある。といっても山岳地帯のど真ん中で、標高1602mとパンフレットにはある。
本格的な登山の入り口のようで、その他にも簡単なウォーキングコースがあり、また、リフトを使えば
さらに2000mのSareiserjochにも行ける。

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雨上がり

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金融や最新技術で高い国民所得を誇るリヒテンシュタインは
バスも最新式。レモン色の車体は暖房完備で、停留所での人の乗り降りの
際は、段差が低くなるようにプシュ−っと油圧で車体が傾く。

  来たときに降りたVaduzPostのバス停から乗り、Malbunに向かう。およそ30分程度の道のりで、
山道を右に左に曲がっていく。しかしだんだん標高が高くなっていくと天気が怪しくなってきた。
そしてある峠にかなり長いトンネルがあり、そこを抜けると一気に天気が変わっていた。っていうか、
川端康成もびっくり、雪降ってんじゃねーか!

 

 

 終点のMalbunの郵便局で降りた。ひょえー、さみー。セーター着てたって上着がないと寒すぎ。
雪のためか、シーズンオフのためか、更に上に行くリフトは止まっていたがたとえ動いていたとしても
とても行く気にはならん。すぐそばのロッジにとびこみ、ちょうどいい時間なのでお昼にした。Malbunは
ゲレンデのふもとのような街で、Vaduz以上にロッジやレストランがある。サンドイッチにコーヒーで
7SF(500円)と、日本のスキー場のようにぼったくることはない。レストランの中は暖かいので、
深々と降る雪を眺めながら一時間半ほどすごした。夏休みに雪見というのもわるくない。

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夏休みの冬景色

 


吹雪の中、リフトは運行停止

 山から下りてきて、国立美術館に入った。近代的なとても立派な美術館で、横の喫茶店ではなぜか
おすしも出してくれる。写真付きの立派なメニューだったが、お腹も好いていないし高いのでコーヒー
だけにした。しかし日本人は多いし、トラベラーズインフォメーションには日本語の案内があるし、
この喫茶店はおすしを出すし、見知らぬおやじは「おっはー」っていうし、リヒテンシュタインという国、
日本人にマイナーどころか、かなりメジャーな観光地のようだ。

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近代的な建物、国立美術館(Landesmuseum)

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スイス圏ではホットコーヒーでもグラスに入れることがある。
名古屋の喫茶店はかならずコーヒーにピーナッツがつくが、
このようにチョコレートをつけるほうが正しいだろう。

 スイスフランの残りがあまりないので、夕食はスーパーでパンとヨーグルトとチョコレートを買って
簡単に済ませた。

 ここでひとつ、言わせていただきたい。

 スイスのチョコレートはうまい!

 ま、ここはリヒテンシュタインだが、スーパーで売っているものはスイスとほとんど同じはずだ。
 だいたいイギリスのチョコレートって、中に「ヌガー」っていうのかな、キャラメルみたいな、にょーって
のびる、のどが痛くなるくらい甘くなる物体が入ってるんだけど、これは100%まずい。チョコレートって
味がきついから、何も中身が入っていない、純粋なチョコレートってほんとにいいやつじゃないとおいしく
ない。そこで普段食べるチョコレートをおいしくするために天才日本人はどうしたかというと、
中にナッツを入れたんだな。アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツなど。日本で売っているチョコだと
ピーナッツならでん六のビニールの袋に入ったヤツ、アーモンドは、高いのならグリコの10個いりの、
安いのなら明治の20個いりのヤツがおいしいが、一年ほど前にグリコが、明治と同等のもので
30個いりのヤツを発売し、中井君をCMにたてて安アーモンド市場に殴り込みをかけた。こっちの
方が苦味が強いのでMのお気に入りだ。Mは極度のカフェイン中毒で、コーヒーもしくは紅茶、
それにチョコレートがないと手がプルプル振るえ、幻覚、幻聴を感じ、歯がしくしく痛くなってくるので
仕事中もチョコレートは欠かせない。全部食べきる前に次の一箱を買ってきてしまうので、
名古屋オフィスには中身の残ったチョコレートの箱が、百舌の早にえのようにそこかしこに
散乱していたに違いない。特に冷凍庫。
 話がそれたが、日常に食べるチョコレートはナッツを抜きにしては語れない。が、イギリスには
ナッツ系のチョコレートが一切ない!かろうじて合格点をつけられるのはKitKatだけだ。しかし、
このリヒテンシュタインで、ついにナッツ系のチョコレートを見つけた。Hazelナッツという、
ピーナッツを丸くしたようなもので、厚めのいたチョコに埋まっている。やっぱチョコはこうでなくちゃあ。

 

 

さて、明日どこに行こう。トーマス・クック、なくしちゃったので路線図が全然わからない。いずれにしても
バスでスイスのSargansまで戻らなくちゃ行けないのは間違いない。おととい、Sargansで手に
入れた、Sargans発の時刻表は、スイスの北の国境駅、Baselまでのものならある。ここまでくれば
フランスのストラスブール、ドイツならシュツットガルトあたりに行けそう。シュツットガルトからは
ハイデルベルグが近いはず。ただ、残り一週間しかないことを考えて、一気にもう少し北へ行きたい。
ケルンまではちょっと遠いが、フランクフルトあたりに一泊するか。時刻表がないのでよくわから
ないが、まずBaselまで行き、そこから先はBaselで時刻表を手に入れてから決めよう。とりあえず
明日の中間目的地はBasel。BaselへはVaduzからバスでSargansまで、そこからチューリヒを経由して
2時間半くらいだ。