今日の予定はベルギーでもっとも日本人に人気のある都市、ブルージュへの日帰り観光だ。 ブルージュで一泊するのもなかなかよさそうだが、明日ロンドンへ行き、そのままバーミンガムへ汽車で 帰ることを考えると、ユーロスターに早い時間に乗れるようにやはりここブラッセルに泊まったほうがいい。
7:00起床。朝食を済ませたあと準備を整え、リュックを背負ってエレベータで一階に下りる。ヨーロッパ のエレベータはどこもかしこもオンボロで、ここのも例に漏れず、悲しいくらい古い。
Mの前に乗っていたのは女性一人と男性一人。
M(にこやか) 「グッモーニン!」
女性(にこやか) 「モーニン!」
男性(にこやか) 「モーニン!」
だれでもグッドモーニングくらいの挨拶くらいできるだろうけど、挨拶のかえしかたから両方とも英語圏の 人のようだ。
ガタン…
ガタン!
(-_-;)
エレベータが止まった。
男性(半笑い) 「ここは何階ですかあ?」
女性(半笑い) 「に、2.5階でーす!」
管理システムなどがあるはわけではなく、インターホンはない。パネルにある非常用ボタンを押す。
ジリリリリ・・・
女性(半笑い) 「もう一度おしてみましょう!」
ジリリリリ・・・
ドンドンドン!
誰か来た!
係の人(ドアの向こう) 「○×△■□○!」
女性(ひきつり笑い) 「ここにフランス語を話せる人はいないの。」
男性(あせり笑い) 「誰か英語を話せる人を連れてきてくれませんか?」
係の人 「○×△■□○!」
女性(ひきつり笑い) 「英語しかわかりません!」
男性(あせり笑い) 「英語の話せる人をおねがいします!」
係の人 「○×△■□○!」
女性(泣き笑い) 「よわったわねえ…。あなたは英語以外何か話せますか?」
M(動転) 「日本語が話せます」
係の人 「○×△■□○!」
男性(怒り笑い) 「イングリッシュプリーズ!」
係の人 「○×△■□○ザ・ドア!」
男性(疲れ笑い) 「ん?何か英語を話しているみたいだぞ」
係の人 「ドントプットエニースタッフクローストゥーザドア!」
みんなハッとドアを見る。
係の人 「Don't put any stuff close to the
door!」
ヨーロッパのエレベータに多いのは、エレベータの箱自体にドアがなく、各階にだけ扉があるもの。 このエレベータもそのタイプで、エレベータの箱は横が開いていて、そのまますぐ外壁になっている。 そしてそこの空いている部分、安全のためか下部にセンサーがあり、そこに何か引っかかっていると
エレベータが止まってしまう。そしてそこにはMの大きなリュックが自身まんまんにくつろいでいた。
いやあ、ひどい目にあった。エレベータはすぐに動き出し、2階で止まった。さすがにそのまま下に おりる気にはなれず、階段でロビーまで降りていった。
なるべくゆっくり観光したかったので7:00に起きたのに、余計なところで時間を食ってしまった。そして更に 追い討ちをかけるように、フロントのチェックアウトでやたら待たされた。人の列ができているのに受付の 対応する人が増えるわけでもなく、担当の人ものんびり仕事をしている。この辺がヨーロッパなんだよなあ。
やっと自分の番がまわってきた。
受付 「電話を25BF(60円)分使っていますね。」
昨晩、部屋から、今日の夜のホテルを予約しておいた。
受付 「では宿泊費とあわせて4125BFになります」
M 「いえいえ、宿泊料はアコモデーションオフィスで先払いしているはずです」
受付 「ではちょっと確認してみましょう」
ドゥルルルル…
受付 「○×?○×□△ □△、●◎! アーッハッハ」
受付 「アコモデーションオフィスは9:00からだそうです。ちょっとお待ちください」
なんだよそれー。
次に受付がアコモデーションオフィスに問い合わせたのは、すべてのチェックアウト客をさばき終わった後。 もう10:00になろうとしている。
受付 「ではもう一度確認してみましょう」
ドゥルルルル…
受付 「○×?○×□△ □△、●◎! オーッホッホ」
受付 「失礼しました。おっしゃる通り、宿泊料はすでにお支払いいただいています。 お詫びに電話料金25BFは引かせていただきます」
25BFは約60円。怒る気もうせた。
朝がたは雨が降っていたのだが、エレベーターに閉じ込められたりチェックアウトで 散々待たされているうちにいつのまにか快晴になっていた。 今泊まっているホテルはちょっと高いので今晩は別のところに移る。昨日電話で予約した ホテル・マンハッタンに荷物だけ預け、トラムでGare
Du Midi(南駅)に向かった。

10:30発、南駅発ブルージュ行きの汽車に乗る。ベルギー国鉄は初めてだが、ブルージュまで 往復800BF(2000円)はお手ごろ価格だ。隣の席には日本人の家族連れが乗っている。聞き耳を 立てているとロンドンから入り、ユーロスターでブラッセル、その後ブルージュというルートらしい。 ロンドンの宿について、大枚はたいて四つ星ホテルに泊まったのにあのぼろさはなんだ!と 散々毒づいていた。やっぱりロンドンのホテル事情は目に余るのだ。
ちょうど一時間、11:30頃にブルージュ駅に到着。
ブルージュはかつては海から運河をひき、スカンジナビアとの交易によって発展した歴史の ある街だ。中世、ブルージュで生産された毛織物は良質とされ、ヨーロッパ各地へと輸出され、 栄華を極める。しかし16世紀にスペイン軍に占領され、さらに宗教戦争に巻き込まれると海から 閉ざされるようになり、やがて取引の場はアントワープへとうつり、没落するようになった。 しかし中世以降歴史から取り残され、産業化も遅れたために、現在は中世の町並みに 運河がレースのように敷き詰められた、非常に魅力的な観光地となった。
駅を降りてすぐにインフォーメーションセンターがあった。そこでガイドのパンフレットが入手できる。 日本語版があったのでこれを一冊購入。各建造物の案内や上述の歴史などが紹介されている。 また、外を一周、ぐるりと大運河に囲まれたこの街はそれほど大きくなく、徒歩で回る旅行者のために 散策コースが紹介されている。散策コースA「世界無比のブルージュ」、散策コースB「市民の町 ブルージュ」、散策コースC「ハンザ同盟の町ブルージュ」とテーマごとに3つのコースがあり、それぞれ 2時間程度とのこと。もっとも一般的なAコースから歩き始め、各コースごた混ぜにして美しい古都を 堪能した。

ブルージュは御伽噺の街のよう。
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 観光地にありがちな馬車のタクシーだが、 この街にあると思わず乗ってしまいたくなる。 |
 紅葉にはちょっとだけ早いが、 明るい陽に映える木々にため息がこぼれる。 |

運河を巡るボートサービスは長蛇の列。
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鐘楼(固有の名称はないらしい)からの眺め
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 聖ヤンハイス風車。 ブルージュのあるフランドル地方は 「フランダースの犬」の舞台でもある。 |
 ブルージュの街を取り囲む、一番外側の運河。 |
 ちょっとした小道も中世の薫りが漂う。 |
さて、一通り観光した後、カフェで一休み。何か甘いものはないかな…
ベルギーワッフル
ベルギーに来たらこれを食べなければいけません。店のおにいちゃんも「オイシイヨ」と日本語で 勧めてくれる。
昨日、ブラッセルでも街角の屋台で売っているのを食べた。それもおいしかったが、やはり このようなちゃんとしたヤツ、それも緩やかな日差しのもと、オープンカフェで食べるワッフルは たまらなくウマイ。ほっぺたが左右50個ずつ、計100こ落ちた。
ベルギーは国民一人あたりのレストランの数が、ヨーロッパで最も多い、知られざるグルメ大国だそうだ。 今回の旅行のトリをとるべく、ブラッセルのレストラン街をふらふら歩いた。 グランドプレイス付近は各レストランが軒を連ね、路地に所狭しとテーブルを出している。軒先には 各種フルーツやエビや蟹などのシーフードがあふれ、世界一食事のまずいイギリスから来た身には、 この雰囲気だけでおなかいっぱいだ。とあるレストランでトマトスープとものすごいチーズの スパゲティカルボナーラを注文し、最後の夕食を楽しんだ。

司会者 「さあ、いよいよ最後の得点です。ブラッセル、ブルージュを合わせて得点を 出してもらいましょう。どーぞー!!」
ドゥルルルルルルルルルル…
「10点9点10点9点9点8点8点9点10点 合計はぁ…」
ドドン。
「92てーん!」
司会者 「最後にふさわしく、なかなかの高得点でした。さてこれも最後のインタビューに なります。『フランダースの犬』で活躍したパトラッシュさん、いかがですか?」
パトラッシュ 「バウバウバウバウ」
司会者 「ブラッセルは以前一度来ているので新鮮味はなかったが、ブルージュは非常に いい街だと。なるほど。」
パトラッシュ 「バウバウバウバウ」
司会者 「それに歴史がある街なので綺麗なだけでなく、非常に趣ぶかい。ほほう、京都の ような町だとおっしゃる。しかし代表者に犬コロを持ってくるあたり、ベルギーの人材不足は 否めな…「がるるるる」 |
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